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 親族間の借金は、「利息ゼロのある時払い」というケースが珍しくありません。しかし、利息もなく返済の意思も確認できないとなると国税当局から「贈与」と認定されて多額な贈与税が課税されかねません。そうならないためにも、親族間の金銭貸借であることを主張するために必要なポイントについて書いてみます。

 親と子、祖父母と孫など親族間のお金の貸し借りでは、返済や利払いの取り決めをせず、金銭貸借契約書も残さないケースがほとんどです。ですが、貸し借りの事実を主張する要件を満たさずに国税当局から贈与認定されてしまえば、否応なしに贈与税が課されてしまいます。

 贈与税は贈与額が高いほど税率が高くなる累進課税で、税率は最大55%に達します。つまり借りた額のほぼ半分を納めなければならない計算です。

 判例でも、親族間の金銭貸借は原則として贈与にあたると示されています。2003年の津地方裁判所の判決によると「親族間で財産的利益の付与がされた場合には、特別の事情が存在しない限り、贈与であると認めるのが相当である」との認識を示し、2011年の宮崎地裁判決でも「貸与であることが明らかな場合でない限り、贈与があったものと認めるのが相当」と判示されています。これらの判例でもわかるように金銭の貸借だと主張するには当事者間で金銭消費貸借契約があった明確な証拠を提示しなければならないことになります。

 親族間の資金移動が金銭の貸借だと主張するためには3つの要件を満たす必要があります。

 1つ目の要件は、金銭貸借があったことを証明するための契約書の作成です。金銭の貸し借りを含め、契約そのものは民法上口頭であっても当事者間の合意があれば成立しますが、国税当局に契約の存在を主張するには書面の証拠がなければ難しくなります。判例においても契約書がないことが、金銭貸借ではなく贈与とみなされる判断材料となりました。

 証拠として残す契約書には、借主のみが署名捺印する「借用書」と当事者双方が署名捺印する「金銭消費貸借契約書」の2種類があります。いずれを選択しても証拠としての効力に大きな差はありませんが、原則として2通作成し、貸し手・借り手の両者が手元に保有する金銭消費貸借契約書の方が、紛失などの間違いが起こりにくくなります。また贈与を貸借とごまかすために金銭消費貸借契約書を間に合わせで作成したと国税当局や裁判所に疑われないようにするため、作成時には公証役場で確定日付印を押してもらっておくとよいでしょう。

 2つ目の要件は、返済履歴の証明です。「実質的に贈与であるにもかかわらず形式上貸借としている場合」や「ある時払いの催促なし」または「出世払い」などのような貸借の場合は、借入金そのものが贈与として取り扱われます。契約書の作成だけではなく実際に契約を履行している事実の証明が求められます。現金のやり取りは証拠として残しにくいので、返済については履歴が残る銀行振込で行うという工夫が必要でしょう。

 最後の要件は利子の設定です。借入金が無利子だと利子に相当する金額の利益を受けたものとして、その利益相当額が贈与として取り扱われます。契約書の作成時には借入金に係る利子を忘れずに設定記載し、返済時も利子を含めて返済してください。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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