第1174話 葬式費用
葬式費用は、相続税の計算上、負担者の相続税の計算において原則として控除できます。控除可能な葬式費用の範囲は、一般的に考えられている葬式費用の範囲より狭く、初七日法要などの法要の費用や、死者の追善供養にあたるとされる仏事の費用は含まれません。あくまでも、埋葬や火葬、納骨に要した費用など、葬儀に際し直接的に要した費用が相続税で控除される葬式費用とされており、葬儀と区分される行事にかかる費用は、その対象とはなりません。
ただ実際に控除できる葬式費用にあたるかどうかの判断は、非常に困難です。実務上、税務当局が公表している通達の例示を基に判断しますが、これによらない葬式的な費用も多数ありますし、この例示では該当しないとされている費用に類似するものであっても、葬式費用と認められる場合もあります。
そのひとつに、会葬御礼品にかかる費用があります。通達の例示では、香典返しの費用は葬式費用にあたらないとされていますが、同じ弔問客に対するお礼の意味合いがあるのに、会葬御礼品の費用は、葬式費用として控除できます。この違いは、香典返しの費用は香典を行ったものに対し、その金額に応じて返戻するものであるのに対し、会葬御礼品はすべての弔問客に同じ品物を一律に渡すものである点です。会葬御礼品は、一律に渡すので葬式に伴い必要不可欠なものであるとの考え方によるものでしょう。
過去の裁決事例では、弔問客に商品券を配布した費用について会葬御礼品として控除したものの、この商品券が参列した者全員に配られたものでないことを踏まえて、香典返しの費用に該当するとして、葬式費用にあたらないと判断されたものがあります。
この裁決事例で香典返しの費用が葬式費用にあたらないとされている理由について、香典が贈与税の非課税であることに対応した取り扱いであるからと指摘されています。香典は社会常識として交付されるもので、それに対して課税するのは非常識なので、香典に贈与税を課さないとされています。
贈与税は相続税の補完税とされていますので、贈与税が課されないものは相続税の計算においても影響させるべきではありません。これに対する返戻費用についても同様です。
ともあれ、税理士はもちろんのこと、税務当局の調査官も葬儀の専門家ではないので、葬式費用についてはもっと柔軟な取り扱いが認められるべきだと思います。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
「所長の独り言」一覧はこちら
免責
本記事の内容は投稿時点での税法、会計基準、会社法その他の法令に基づき記載しています。また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上実行してください。当事務所との協議により実施した場合を除き、本情報の利用により損害が発生することがあっても、当事務所は一切責任を負いかねます。また、本記事を参考にして訴訟等行為に及んでも当事務所は一切関係がありませんので当事務所の名前等使用なさらぬようお願い申し上げます。
