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 電子帳簿保存法の改正により、ここ数年、税務の現場では大きな混乱が生じています。そもそもの発端は、経理情報を電子データでやり取りする「電子取引」について、そのデータを保存することを突如、財務省が義務付けたことにあります。この扱いはあまりにも現場の対応からして現実離れしていたこともあり、現状法律上は電子取引のデータ保存が義務付けられているものの、その義務を緩和する措置を用意している状況です。

 このため、この措置を使えば実質的に不利益はない状況と解釈されることもありますが、法律で義務付けされている以上、それを税務署の調査官が脅しに使わないことはあり得ません。例えば青色申告の取消しは、法律の要件に合致しても、取り消すだけの悪意性がなければ行ってはいけないとされています。にもかかわらず「法律の要件に合致しますので青色申告は取り消します。しかし私の指導に従えば、猶予してあげます」といった形の指導(交渉)が税務調査ではよく見受けられます。

 実際、税務雑誌に先日、国税職員が電子帳簿保存法を根拠に、すべての社内メールを提示し、ダウンロードの求めに応じないと青色申告の取消対象になると指導した事例が掲載されました。社内メールのうち、経理情報が書かれているものについては、保存義務があり、税務調査で開示もしなければなりません。一方、経理情報が書かれていないものは、そもそも保存義務がなく、税務調査においても提示しなくても問題ありませんので、この指導は間違っていることになります。

 国税職員のこのような誤った指導により、納税者がその指導を信頼してしまうと後日その不利益を是正することはできません。任意で納税者が提示しなくてもいい資料を見せたと判断されるからです。このため、国税職員の指導を信頼することなく、正しい電子帳簿保存法の知識を身に付けておく必要があります。

 保存義務を緩和する措置があるにしても、電子データを保存する義務を定めた法律が実際に存在するのですから、国税職員はそれを交渉材料として使い、税務調査を有利に進めようとする傾向があります。このような不適切な事態が生じる恐れがあるため、現実に即していない法律を作ること自体、絶対に許すべきではないのです。

 しかし、今後も電子データの保存義務を悪用した税務調査は増え続けることが予想されます。電子帳簿保存法の範囲をしっかりと理解するとともに、調査官を唸らせる交渉術を身に付けておかないと、電子帳簿保存法を悪用した税務調査で不利益を被ってしまいかねません。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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