名義人と実際の所有者が異なる「名義預金」は、資産隠しの温床とも言われ、相続税調査で最もマークされる部分でもあります。とはいえ、家族名義で銀行に預けたお金は、どこから「相続・贈与」になるのか、あいまいな部分も多くみられます。税務当局は何を見て、名義預金と判断するのでしょうか。

 たとえ預金口座の名義人が相続人であっても、実質的な口座の所有者は亡くなった被相続人だったと税務署に判断されれば、預金の金額が相続税の課税対象となります。これは「名義預金」といわれ、相続税調査では必ずといっていいほど狙われる主要ターゲットの一つです。

 とはいったものの、家族名義で預けたお金が「実質的に親の財産」と判断されるというのなら、子どもの口座に入れたら、どこから贈与と判断されるのか気になるところです。

 子供へのお小遣いがある程度まとまった金額になると、それは贈与となります。つまり、年間110万円を超えれば贈与税の課税対象となってしまいます。私の小さい頃は親せきからもらったお年玉を、「あなたの名義の預金にしっかり貯めておきますからね」とよく親からうそをつかれたことを思い出します。現金ではなく親の口座から子供の口座へ預貯金を移した場合でも同じです。

 しかし実際には、子供名義の口座は親が作ったもので、実質的に親が管理している場合はどうでしょうか。資産家が家族名義の口座を複数つくり、そこに自分名義の口座からお金を移すことで簡単に非課税の生前贈与ができてしまいます。

 相続税法基本通達9-9では、「不動産、株式等の名義の変更があった場合において対価の授受が行われていないとき又は他の者の名義で新たに不動産、株式等を取得した場合においては、これらの行為は原則として贈与として取り扱うものとする」と定められています。

 ただしこの通達では「不動産、株式等」について言及している一方、「預貯金」については触れていません。つまり、預貯金の名義変更や名義借り、名義貸しが「贈与」になるかどうかは、実態で判断するしかありません。しかしその判断は非常に難しく思われます。平成2年3月20日名古屋地裁判決をみると、「贈与税がかからないよう非課税限度額内で預金を続けたが、その管理、運営、払い戻しについては、すべて親の判断で行っていたものであり、一方、子どもはその名義が使用されたほかは預金の形成、管理、運営または使用に関与することはなかった」として名義預金として相続税の課税を認めています。

 贈与税には、原則6年、仮装隠蔽の事実があれば7年の時効があります。しかし名義預金には時効がありません。贈与はなかったと認めてしまえば税務署は相続税が取れることになります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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