第689話 満期を迎えた個人年金
国の年金制度だけでは老後が不安であるとして、保険会社などが提供する個人年金保険に入っている人は結構います。受け取れる金額や支給開始年齢など細部は会社によって異なりますが、その内容はおおむね、会社を定年退職してリタイアする年齢まで保険料を支払うことで、その後の一定期間か、死ぬまで毎年年金が受け取れる貯蓄型の商品となっています。
多くの個人年金では、満期を迎えるまでに本人が亡くなった時には遺族に死亡給付金が支払われるようになっています。そのために、生命保険と同じように年金の受取人を配偶者としている人も多くみられます。しかし保険料を自分で支払って配偶者を受取人とする個人年金は、満期を迎えた時には多額の年金を受け取れるどころか払いきれないほどの贈与税を課されてしまう可能性があります。個人年金も生命保険と同様に、保険料負担者と保険金受取人の関係によって課される税金が異なります。どちらも同じなら「所得税」が、受取人が異なれば「贈与税」か「相続税」の税金が課されることになります。
しかも生命保険金であれば、あくまで税金は実際に受け取った保険金にかかるので、納税資金がないという事態は原則として起きませんが、個人年金の場合はそうはいきません。個人年金は、長い期間にわたって少しずつ支払われますが、贈与税は満期を迎えて一度目の受け取りを行うタイミングで、その時点での「評価額」全体に贈与税がかかるからです。1年あたり50万円を受け取る年金に対して、一気に数百万円の税金が課されることもあり得ます。なお、2年目からは、初年度の評価額から運用で増えた分について所得税が課されます。
このような事態を防ぐためには、満期を迎える前に、年金の受取人を保険料支払者に変更しておかなければなりません。もっともその場合でも変更時点までに積み上げてきた「保険金を受け取る権利」を贈与したという扱いは変えられませんので、完全に贈与税を免れることはできないというのが辛いところです。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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