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 新型コロナウイルスの影響で商売が窮地に立たされている息子が、「必ず後で返すから」と言って、ある程度のまとまった額の借金を頼み込んできたとします。ここは親として助けてやらなければならないと思った父親が、タダであげるのは息子のプライドも傷つくだろうと、「将来、事業が落ち着いてから返してくれればいいから」と返済期限や利子を決めずに快く貸してあげました。

 子を思いやる親の心はまさに美談ですが、この親子の貸し借りは税務署から贈与と認定されてしまう恐れがあります。

 親と子、祖父母と孫など親戚関係にある人同士の借金について、国税は借入金の返済能力や返済状況などから見て「真に金銭の貸借契約」であるかどうかを判定します。ある時払いの催促なしや出世払いのように、通常の第三者間の貸借契約ではありえないような条件での借金は、実質的な贈与と認定されてしまいます。万が一にも贈与認定されないためには、返済期間をきちんと設定し、貸借契約書を作成する必要があります。

 さらに、例え貸借契約であると認められても、無利息であったり相場に比べて著しく低い利率であったりすると、利息分が贈与されたとして、贈与税を課される可能性があります。後になって息子が多額の税金で苦しまないようにするためにも、親子間であっても金の貸し借りだけはきちんとしておきたいところです。

 なお、「出世払い」というと「出世しなければ返さなくてよい」と聞こえますが、過去の判例によりますとおおむね「出世できないことが明らかになった時点で返済義務が生じる」という見方が採用されています。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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