第711話 ゴルフ場利用税の課税根拠
日本には様々な税目がありますが、世界的にみて珍しい税の代表格として「ゴルフ場利用税」が挙げられます。都道府県税で税収の7割は、ゴルフ場が存在する市町村に交付されます。ゴルフ場の経営者がゴルフ場の利用者から都道府県に代わって徴収し、納入する義務を負います。18歳未満の者、70歳以上の者、一定の障害がある者は非課税とされています。国体や学校行事での利用でも非課税となる措置があります。
税率の基準は各都道府県によって異なっており、利用料金やゴルフ場の規模などの等級に応じて課税されます。
スポーツ場にかかる税金として廃止を求める声も根強くあがっていますが、その課税根拠となっているのが、応益負担と贅沢娯楽の考え方です。応益性については、ゴルフ場にかかる開発許可や道路整備などの行政サービスは、主にゴルフ場利用者に帰属することから費用を負担させようとするものです。一方、贅沢性は、ゴルフ場の利用は他の一般レジャーに比べて費用が高いことから、ゴルフ場利用者は高い担税力を備えているという考え方によるものです。
ゴルフ利用者がお金持ちであるかどうかは疑問の残るところですが、道路整備などは自動車やガソリン関係の税金で賄っているものであり、またゴルフ場の利用者だけに負担義務があるわけではないでしょう。
それだけにとどまらず、日本ではそもそも基本的にスポーツに対しては税金をかけないという原則があります。民間のスポーツ施設に国や行政が税金をかけることは他のスポーツでは考えられないことです。では、ゴルフはスポーツではないのでしょうか?
かつての判例では、「ゴルフにはハンディキャップというものがある以上、スポーツではなく単なるゲームとすべき」と判断された例があり、これが現在でも課税の大きな根拠となっています。
ですが、東京五輪でも正式種目となったゴルフをスポーツにあらずというのはいささか無理があるのではないでしょうか。非常に疑問の残る課税根拠と言わざるを得ません。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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