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贈与税の課税制度には、年間110万円までが非課税となる「暦年課税」に加えて、トータル2500万円までの贈与税を非課税とする「相続時精算課税」があります。

「相続時精算課税」は、親や祖父母から贈与を受けた財産について、贈与者の死亡時に相続財産に合算して最終的に相続税で清算する制度です。何回贈与されても2500万円までなら贈与税が非課税となり、2500万円を超えても一律で20%の贈与税で済みます。そして相続発生の際にも贈与時点での評価額で税額を算出するため、贈与から相続の間までに値上がりした財産については相続税の節税にもなります。

ただし、注意しておきたいのが、制度選択2年目以降の処理です。

相続時精算課税を一度選びますと2度と暦年贈与には戻ることができないため、なんとなく「申告が毎回必要な暦年課税、一度きりの相続時精算課税」と考えてしまいそうですが、そのような考えをしていると後でとんでもないことになります。前述の通り相続時精算課税は、トータルで贈与された額を相続発生時に精算しなければならないため、相続時精算課税を選択後にどれだけの額が贈与されたかも重要な情報となります。そしてその情報を税務署が把握するには「生前にこれだけ贈与しました」とまとめて申告するのではなく、暦年課税同様、贈与した年ごとの申告が必要となってくるわけです。

昨年に相続時精算課税の選択届出をしたからと安心して、今年の贈与について翌年3月の期限までに申告をしないと、その分については相続時精算課税の対象とはならず、とはいって暦年課税にも戻れず、何の非課税枠もない単なる贈与として扱われてしまいます。例えば1年目に1,000万円、2年目に1500万円を贈与して相続時精算課税の非課税枠を使い切るつもりだったのが、2年目の申告を忘れてしまうと1,500万円全額に贈与税が課されることになるのです。この場合、1,500万円×20%=300万円の贈与税がかかることになります。

なお、相続時精算課税制度の適用を受けるためには、申告期限までに①贈与税申告書と②相続時精算課税選択届出書等の提出を行わなければなりません。ただし、やむを得ない事情があったと税務署長が認める場合には②の相続時精算課税選択届出書の提出が期限後になったとしても相続時精算課税の適用を受けることができるとされています。(これを「宥恕規定」といいます。)

しかし、申告期限内に①の贈与税申告書自体を提出しなかった場合には、宥恕制度はありません。その場合には、どのような理由があろうとも、対象年に行われた生前贈与につき、相続時精算課税制度の適用は受けることはできません。

 良かれと思って選んだ制度で損をしないよう、2年目以降の申告には十分注意を払っていただきたいです。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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