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 2011年3月11日に発生した東日本大震災から10年が経過しました。しかし、いまだに被災地の復興は途上です。国民は25年間にわたる所得税増税と10年間の住民税引き上げを受け入れ、増税分を毎年コツコツと納め続けています。これら増税分が直接被災地復興事業に使われているのなら良いのですが、実際にはそれら増税分が被災地とは無関係な事業に使われ、また予算の一部は使途が分からず「ブラックボックス化」されています。そして現在のコロナ過。国債発行で賄われた巨額のコロナ対策費はいずれ「コロナ増税」に姿を変えます。果たしてこれからも東日本大震災の復興増税と同様に国民の血税は無駄遣いされ続けていくのでしょうか?

 東日本大震災は復興予算の大半が大増税で賄われることになりましたが、国民の多くは「被災地の再生に役立つことができるのなら」と、消費税増税のような異議を唱える人はほとんどいませんでした。

 当時を振り返ると、震災発生から8か月後の2011年11月に復興財源法が成立し、臨時増税が決定。所得税は2013年1月から25年間、税額2.1%が上乗せされ総額7兆5000億円が課税されることになりました。住民税も2014年6月から10年間、一人当たり年1000円の均等割が追加され6000億円の税収となっております。さらに退職金にかかる住民税の10%控除を10年間廃止することで1700億円が確保されています。

 復興増税は25年間におよぶ長期かつ重税ですが、その使い道は必ずしも東北の復興のためではないというのが現実です。納税者の「被災地の復興に役立ててほしい」との思いは届かず、復興予算は被災地とは無関係な事業に使われ続けています。

 2011年度は15兆円の復興予算がつぎ込まれましたが、この時に執行されたのが9兆円で残った6兆円は2012年度に新設された「復興特別会計」に繰り入れられました。政府はその理由を「復興予算が不透明になるのを避けるため」と説明しましたが、実はこの復興特別会計に繰り入れた本当の理由は、「貴重な国民の税金を不透明にしないため」ではなく、「霞が関の官僚のための自由なお金にするため」に一般会計と切り離していたにすぎないことが後になって判明しました。

 ではどのようなものが復興増税から使われていたのか……。

 まず、衆参両院の建物の改修費用として総額7億円が投じられました。そして国会議事堂だけではなく、霞が関の各官庁施設にも復興予算は投じられています。中央合同庁舎4号館は、財務省、内閣官房、内閣府、農林水産省などが利用しているまさに霞が関の中枢ですが、国土交通省には復興特別会計から2012年に「官庁営繕費」37億円のうち12億円が充てられ、実際に被災地に宛てられたのが「宮城県石巻湾港合同庁舎整備費」の4.5億円のみです。

 政府が発表した「復興基本方針」には、「全国防災対策費」について、「東日本大震災を教訓として、全国的に緊急に実施する防災、減災のための施策」という文言が盛り込まれています。この文言を霞が関の官僚たちは、被災地でない場所にも「防災対策」であれば復興予算として使用できるという都合の良い解釈をしました。2012年度では全国で被災地以外の道路建設だけで合計351億円の復興予算が計上されています。これらの道路整備の名目は「防災」でした。

 第180回国会提出資料における「東日本大震災復興特別会計歳入歳出予定額各目明細書」では17省庁が所轄する、被災地とは全く関係がない事業がズラリと並んでおります。

  • 沖縄教育振興事業費(内閣府) … 31億4605億円
  • 北海道開発事業費(国土交通省) … 118億8150万円
  • 小笠原諸島の振興開発に必要な経費(国土交通省) … 6億8000万円
  • その他 … 「南極でのシーシェパード対策費」「クールジャパンの推進」「検察運営費」「東京スカイツリー開業プレイイベント」「航空機購入費」「米国での戦闘機訓練費」「原子力推進事業」「防衛省の武器購入費用」等

 あきれてしまうのが各省庁の「職員基本給」「国家公務員共済組合負担金」が予算に計上されていたことです。17省庁の職員基本給の合計額は38億3549万円。国家公務員共済組合負担金は7億2944万円に上っていました。省庁別の予算額を見ると、財政を掌る財務省は5297億7503万円が予算計上されていましたが、そのうち4000億円が予備費に充てられています。この4000億円は、「通勤手当」「扶養手当」「住居手当」「勤勉手当」「期末手当」「子供のための金銭の給付」「退職手当」「超過勤務手当」「職員旅費」などに使われていました。

 また税金を適正に取り扱うべき税務署にも復興予算は流用されています。2011年度3次補正では12億円を使って12税務署の「耐震改修工事」が、2012年当初予算で5億6000万円を使って3税務署の「改修予算」が、2013年度概算要求に3億2200万円を使って2税務署の「改修予算」がそれぞれ計上されました。

 被災地以外の流用が国会でも追及があったにもかかわらず、その後も流用は続きました。

 会計検査院が不適当な使途がないか、東日本大震災の復興予算で実施された事業1411件の内、特別交付税や人件費などを除いた1401件(約15兆2000億円)を調査した結果、復興予算で実施された事業の内、復興に直結する事業の912件(65%)、津波対策事業や学校耐震化の27件(1.9%)、復興事業に直結している事業と関連事業が混在している事業の136件(9.7%)について復興との関連を認めたものの、全体の23,2%にあたる326件について「被災地とは直接関係のない事業」と判断しました。

 また会計検査院の報告書では、復興予算で地方自治体や公益法人が設置する復興関連基金(2兆8674奥円)のうち、実際に使われたのは8244億円(28.7%)にとどまっていることも指摘しました。使われていない資金はそのまま基金にプールされて眠っているだけです。

 東日本大震災から10年が経った今、私たちは新型コロナウイルスにより戦後最大の危機に遭遇しています。日本経済の状況を鑑みますと、2019年10月に消費税率が10%に引き上げられ、さらに新型コロナの感染拡大の影響で、税収の元となる収入や消費は落ち込み、今年の国債発行額は90兆円を超え、財政状況は一段と厳しくなってきています。追加対策も必要となれば財政赤字は100兆円を超えることになるでしょう。

 もちろん今は惜しまずに予算を投じなければなりませんが、コロナ後には財政再建の議論が始まることになるのは必然です。そうなればコロナ増税の声が永田町や霞が関から挙がることになるでしょう。すでに昨年8月に開かれた政府税制調査会では「消費増税の必要性」の意見が早くも出されています。

 英国では富裕層資産に一度限り計5%の税金を課し、約36兆4000億円の税収確保を検討しています。新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた財政の立て直しに多くの国で富裕層の資産に課税されることが今後検討されるでしょう。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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