第840話 相続税の税務調査(2)
相続税調査の調査官は、基本的に2人でやってきます。玄関に入ってきた瞬間から調査は始まっています。調度品を鋭くチェックしているのです。
そして、被相続人の霊前に線香をあげた後、被相続人の生前の思い出話をするように促してきます。実はこれも調査の一環です。そもそも調査官は無駄な話は一切しません。どんなに些細な世間話でも必ず何か狙いがあります。日常会話に見えても、調査官は常に申告漏れを見つけ出すための糸口を探っているので油断は禁物です。
調査官は、被相続人の趣味や交友関係といった相続税調査とは一見無関係な話題から、財産の流れを探ろうとします。例えばゴルフが趣味であれば、ゴルフ会員権を持っている可能性を疑います。また死因だけではなく病歴も聞き出されます。例えば5年前から認知症を患っていた被相続人の口座から、死亡1ヶ月前に多額の現金が引き出されていたとしたら、相続人が現金を手にしていると疑われることになります。
さらに会話中も調査官は部屋の隅々まで視線を走らせます。室内にかけられたカレンダーや洗面所のタオルに金融機関の名前が印字されていれば、提出書類にあった金融機関名と照合されます。申告書類にその名がなければ、疑われるのは、名義人と実質的な所有者が異なる名義預金の存在です。名義口座が疑われた場合、その金銭が名義人の特有財産であることを証明しなければなりません。
調査官の追及はまだまだ続きます。例えばアドレス帳に郵便貯金の申告がないのに郵便局の電話番号と担当者名が記載されていますと、申告漏れがないか必ず確認されます。同様に年賀状や日記帳その他メモ帳などもチェック対象となります。
印鑑も入念にチェックされ、被相続人の印鑑を白い紙に一度カラ押しして印影を確認し、朱肉をつけてもう一度印影をとります。こうしてすべての印鑑の印影をとっておき、他の書類と突合して名義預金などの発見に役立てます。カラ押しで印影が写る場合は、最近使用したものと確定。被相続人が、自分で使っていた印鑑と、家族名義の預金に使用されている印鑑が同じであれば、これもまた名義預金の可能性を疑う材料となります。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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