第894話 連年贈与の落とし穴
毎年110万円までの「暦年贈与」には贈与税がかからないことはよく知られています。特に最近になって暦年贈与の将来的な廃止がささやかれていることもあり、今からでも毎年110万円の贈与を行って相続財産を減らそうと考えている人が増えているのかもしれません。
しかし毎年110万円を贈与することをあらかじめ約束しておくと、税務署から「連年贈与」と判断されて贈与税を課されることがあるので注意が必要です。連年贈与とは税法上で定義された用語ではなく、税界の通称でひとつの贈与が何年かに分割されたものを指す言葉です。
そもそも暦年課税では、贈与税は1人が1月1日から12月31日までに受けた財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対して課税されます。仮に子供が2人として、年間110万円ずつ10年間にわたって贈与したとしますと、110万円×2人×10年=2200万円を、それぞれの子供に1100万円ずつ、税負担なく贈与することができます。
だが、これが毎年110万円を10年間ではなく1100万円を10分割して年に110万円ずつ受けていたとなりますと、1100万円を受け取る権利を最初の時点で取得していたとみなされて課税されることになります。結果として同じ金額になったとしても、毎年110万円の贈与なら見逃しても、贈与するつもりの1100万円をわざわざ分割しているのは、課税逃れの意思があると判断されるからです。
そのため、税務署に連年贈与と思われないためには、贈与のたびに贈与契約書を作成しておく必要があります。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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