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 ロシアがウクライナに軍事侵攻を始めた2月24日以降、日本でもウクライナを支援するための寄付を申し出る声が広がっています。在日ウクライナ大使館が2月25日に寄付金専用の銀行口座を開設すると、わずか5日間の間に5万件の振り込みがあり、その総額は20億円にものぼりました。このほか、人道支援団体などによる緊急制度も次々に立ち上げられました。読者の皆様の中にも、寄付金を提供した方がいるのではないでしょうか。

 そこで今回は、ウクライナ支援の寄付金と税金の関係について書いてみたいと思います。

 

1.個人が支払った寄付金

個人が支払った寄付金は、その寄付先によっては所得税の優遇措置を受けられます。公益に役立つ寄付では特別措置が設けられています。

ウクライナ支援のための寄付金についても、日本赤十字社や日本国内の公益財団法人、公益社団法人、認定NPO法人に対するものは税優遇を受けられます。

なお、在日ウクライナ大使館への寄付につきましては、残念ながら税優遇が用意されていません。支払先が外国政府であり、日本の国益との関係が不明確なためです。

控除額

個人が支払った寄付金に対する所得税の優遇措置には2種類あります。所得控除と税額控除です。公益法人や公益財団、認定NPO法人への寄付は、これら2つの内、有利な方を選択可能です。高額所得者を除き、多くのケーでは税額控除を選ぶ方が有利になります。

①所得控除(寄付金控除)

所得の金額から一定額を差し引ける優遇制度です。差し引ける金額は、次の計算式で算出します。

控除額=寄付金の額※-2000円 ※所得額の40%が限度 

②税額控除(寄付金特別控除)

その年の所得税の額から一定額を差し引ける優遇制度です。差し引ける金額は、次の計算式で算出します。ただし控除できるのは、その年の税額の20%までです。

控除額=(寄付金の額※-2000円)×40% ※所得額の40%が限度

    手続き

寄付金について所得控除又は税額控除の適用を受けるには、支払った寄付金に関する事項を確定申告書に記載するとともに、寄付先が発行した証明書を申告書へ添付する必要があります。なお、確定申告書をe-Taxにより提出すれば、証明書の添付を省略することができます。

 

2.遺族が支払った寄付金

遺産を相続した人が、その一部を公益的な活動を行っている団体に寄付した時には、相続税の優遇制度を受けられます。そもそも相続税法では、公益的な事業のために使われている遺産を相続すると、その遺産には相続税を課さないこととされています。この仕組みとバランスを取るために、相続税の申告期限までに公益的な活動を行っている寄付先に遺産を寄付した場合にも、相続税を課さないようにしています。

ウクライナ支援のための寄付金についても、日本赤十字社や日本国内の公益財団法人、公益社団法人、認定NPO法人への寄付については税優遇を受けられます。所得税の優遇制度と同じです。在日ウクライナ大使館への寄付については適用がない点も、所得税と変わりありません。

手続き

寄付金について相続税の免除を受けるためには、相続税の申告書に寄付に関する事項を記載した明細書と寄付先の発行した証明書等を添付して税務署へ提出する必要があります。

 

3.法人が支払った寄付金

法人が支払った寄付金は、一定の金額まで経費として申告できます。法人税法において、経費にできる限度額が定められているためです。ウクライナ支援のための寄付金についても全額が経費になるのではなく、経費にできるのは限度額までです。なお日本赤十字社や公益法人、認定NPO法人に対する寄付金については、経費にできる限度額に特別枠が設けられていて、少し多めに経費にできます。公益に役立つような寄付を奨励するために、このような措置がとられています。

   ところで、なぜ限度が設けられているのか、疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。法人の経費にできるものは原則として、企業が収益を生み出すのに必要な支出とされています。かたや寄付金のように対価性のない支出は、材料の仕入れや人件費など対価性のある支出と違って、それが収益を生み出すために必要かどうかを客観的に判定するのは難しいといえます。寄付をした事情や寄附先、寄付金額、寄付したお金の使われ方によっても、判断は変わります。そこで経費かどうかの判断基準を簡単にし、公平性を保つために、統一性な限度額を設けています。

   限度額の計算式

   限度額は寄付をする法人ごとによって違いますし、どの年度に寄付を行うかによっても変わります。限度額は、次の2つの要素を使って計算する為です。

①寄付をした年度末の資本金の額

②寄付をした年度の所得金額

当然ながら資本金は会社ごとに違いますし、所得の金額にいたっては同じ会社でも年度ごとに変動します。そのため、決算をするたびに限度額を計算しなければなりません。

一般的な法人であれば、次の算式で計算します。具体的な計算例は省略しますが、公益法人等への寄付に適用される特別枠が優遇されているとお分かりになると思います。

  • 一般枠による限度

(資本金の額×0.25%+所得金額×2.5%)×1/4

  • 特別枠による限度(一般枠に上乗せ)

   (資本金の額×0.375%+所得金額×6.25%)×1/2

   手続き

   法人が寄付金を経費として申告するためには、寄付金の経費算入に関する事項を記載した明細書を申告書に添付するとともに、寄付先が発行した証明書等を保管しておく必要があります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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