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 相続税の税務調査で問題になる名義財産ですが、その名義人が配偶者の場合には通常よりも大きな注意が必要になります。被相続人の名義財産か否かを判定する際、

 

①その名義財産の原資を出した者はだれか(出損者)

②その名義財産を管理運営しているのは誰か(管理運営状況)

③名義人に対する生前贈与は成立しているか(生前贈与の有無)

 

の3点が特に重視されますが、配偶者に関しては②の「管理運営状況」は問題

とされません。なぜなら「お小遣い制」という言葉もある通り、妻が夫の財産を管理するのは特別なことではないと原則として判断されるからです。

 事例としても、妻が契約者となっていた生命保険について、被相続人である夫のみなし相続財産とされたものがありました。被相続人が保険料を払っている一定の生命保険については、その受取人の相続財産とみなされることになっています。この事例では、妻が契約者で保険料を支払っていましたが、専業主婦であり夫の稼ぎで生活していたため、夫のお金が保険料の原資であり、被相続人である夫が保険料を支払ったと判断されています。

 この事例も同様ですが、専業主婦である被相続人の配偶者について名義財産が問題になった場合、生活費の余剰を夫からの生前贈与とみることができるかが問題になります。妻が節約してやりくりしたお金を貯めていたようなケースです。

 この場合、妻としてはお金を夫からもらったという認識なので生前贈与が成立しており、そのお金を預金しても夫の名義預金には当たらないと主張しますが、このような主張は原則認められません。なぜならこのような生活費の余剰分は、基本的には妻の個人財産ではなく、夫との共有財産とされるからです。夫との共有財産であれば、妻独自の財産ではなく、かつその原資は夫の稼ぎとなりますから、原則としてその全額が夫の名義財産と判断されることになります。

 これらの理由で、名義財産のリスクが大きい配偶者の中でも、とりわけ自分に稼ぎがなく、名義財産の原資を主張できない専業主婦の方は、税務調査で問題になることが多くなります。このため、生前贈与については贈与契約書を作るという王道的な対策を取っておくことはもちろん、専業主婦ではなく共働きとしておくと、妻名義の財産の原資は夫のお金とは限らない、という反論が効きますので、リスクヘッジになります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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