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 2019年7月に施行された改正民法では、約40年ぶりに相続関連法の大きな見直しが行われました。そのうちの一つが「遺留分の金銭債権化」です。

 従来は、遺産分割の内容に不満を覚えた相続人が遺留分を請求したとき、その請求の対象となっていたのは「相続財産そのもの」でした。つまり現金だけではなく、不動産や有価証券なども含まれていました。

 しかしそれでは、遺産の大半を不動産が占める場合、遺留分の請求を受けた時点で共有状態となり、処分や利用に大きな制約を受けてしまいます。同様に自社株などが遺留分の対象となりますと、全株式が共有状態となり、後継者が議決権などを自由にふるまえず経営が阻害されてしまいます。

 そこで改正民法では、遺産分割の結果に不満のある法定相続人が遺留分の請求をしたときに、その対象を「相続財産そのもの」ではなく「遺留分相当額の金銭」と規定しました。これにより現在では、遺留分の請求に対しては金銭のみでしか応じられなくなっています。また同時に、「遺留分減殺請求」の名称が「遺留分侵害額請求」に改められています。

 ただ遺留分の支払いが金銭のみになったということは、請求をされた側はまとまった額の現金を用意しなければなりません。例えば相続財産のほとんどが不動産のケースで、遺留分を請求された相続人に現金資産がほとんどない場合、売却できる不動産があるなら現金に換えたり、銀行からお金を借りてそれに充てたりすることになります。

 それでもどうしても金銭が用意できないのであれば、両者の合意の下で従来のように金銭以外の不動産などを充てることができます。ですがその場合には、財産を渡した側に譲渡所得税が課されてしまいますので注意が必要です。

 

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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