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親族に横暴な相続人がいた場合を考えてみましょう。

 例えば、兄弟3人で父の遺産を共同相続したのに、父が住んでいた実家に長男一人が住み込み、しかも現預金や車などの動産も独り占めしている。そんなとき、弟2人は兄に対して「相続回復請求権」を主張して遺産の取戻しを請求することができます。

 もともと相続回復請求権は、真の相続人でないものが相続人のように振舞って遺産を奪う行為を防ぐためのもので、請求相手は「一見相続人に見える者」を指す「表見相続人」が想定されていました。表見相続人になるのは、父の生前に親を虐待したことで相続人の廃除を受けている者のほか、偽りの出生届や無効な養子縁組で子供となっている者でした。これが後に判例で、表見相続人だけでなく、共同相続人が当該相続人の取得分以上の財産を独り占めしているようなケースも含まれると判断されています。

 相続回復請求権は、侵害者に対する個々の財産そのものの請求権にとどまらず、相続人たる地位の回復を要求する権利でもあります。また請求権は、侵害の事実を知った時から5年間(時効期限)、相続開始から20年間(除斥期間)で権利が消滅します。

 ただし時効を盾に真の相続人の請求を退けられるのは、自分に相続権がないことを知らずにいた「善意無過失な侵害者」に限られます。そのため横暴に弟たちを追い出した兄のような場合には時効を援用することは現実にはほとんどありません。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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