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 本来の調査目的とは関係なさそうなプライベートの情報まで収集することは、「横目調査」といって、国税通則法で禁止されていますが、実際にはこのような調査手法が現場でまかり通っているのが実情です。

 国税当局に申告漏れを指摘された納税者が、重加算税を認定された決め手がYouTubeの視聴履歴だったことが話題を呼んでいます。

 調査を受けたのは、動画配信によって投げ銭や広告収入を得ているユーチューバーの男性です。動画配信の収入を申告していなかったところ、関東信越国税局の税務調査を受けました。

 無申告であったことについて、男性は「収入があったことは認めるが、申告の必要性を認識していなかった」と弁解しましたが、調査官が男性のパソコンで各種サイトの閲覧履歴などを調べたところ、他の配信者の税務調査に係る動画を視聴していたことが判明しました。併せて動画配信サービス会社から確定申告の必要性に係るメールを受け取っていたことから、当局は男性を追及。男性はついに、必要性を認識していながら申告を怠ったことを認めたため、男性は故意による隠ぺいがあったとして重加算税を科され、追徴税額は約700万円に上りました。

 本来、税務調査にあたっては当該対象者に対して必要である内容のみを調べることができ、法定資料以外は納税者の任意の協力によって確認できるもので理由もなく調べることは違法とされています。

 今回の動画の閲覧履歴がそれに当たるかはわかりませんが、過去には法律違反とも取れるような「横目調査」が数多く行われてきたのは事実です。

 大阪高裁で2018年11月に判決が下された判例では、大阪国税局査察部(マルサ)の調査が「横目」によって収集された情報に基づくものであったことから、納税者が無効を訴えました。当局は裁判で「資料はあくまでも偶然発見したもので違法ではない」と一貫して主張し、判決も「違法を帯びる点がみられるとしても重大な程度には至っていない」として横目調査をとがめませんでした。

 また2020年12月の国税不服審判所の裁決では、納税者のLINE上でのやり取りを記録した画像データが当局側の証拠として採用されています。本来非公開であるはずのLINE上の記録データを国税当局が入手し、さらに審判所が証拠として有効だと示したことになります。

 最近では実地調査の現場で100%言われる常套句として「パソコンの中身を見せてください」というものがあります。こういった質問に対して安易にうなずいてしまいますと、パソコン内のすべての情報について見られるリスクもあることを認識しておかなければなりません。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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