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今年の相続税申告の実務において、不可思議に思われた事例を私事ながら税務トピックスの一例に挙げたいと思います。三大都市圏においては500㎡以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域においては1,000㎡以上の地積の宅地で、ある一定の要件を満たした宅地を「地籍規模の大きな宅地」といいます。地籍規模の大きな宅地に該当した場合、土地評価を大きく下げることができます。地積規模の大きな宅地に関しては、従来は広大地通達(旧評価通達24-4)がありました。しかし、その適用要件の判定をめぐって納税者と税務署との間で争いが多かったことなどを踏まえて平成29年9月の評価通達改正で廃止され、新たに評価通達20-2(地積規模の大きな宅地の評価)が新設されました。平成30年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得する宅地から適用されています。

今年の相続税申告につき、路線価の中小工場地区にある1,000㎡を超える土地の評価をすることになりました。旧広大地時代つまり平成29年12月までは、中小工場地区においても評価減の適用が認められていた事例です。しかし、地籍規模の大きな宅地の一要件として、適用範囲が路線価図上の普通住宅地区と普通商業・併用住宅地区に限定されたことにより、土地の評価減を受けることができませんでした。

なぜ以前、評価減の対象として認められていた中小工場地区が地籍規模の大きな宅地においては、除外されることになったのでしょうか?

旧広大地時代の中小工場地区は都市計画法の準工業地域や工業地域とほぼ軌を一にする地域区分でした。ただし、準工業地域といってもその最有効使用は中小工場や倉庫ではなく、建売業者が細分化をして戸建住宅の建売用地になるケースがほとんどでした。よって、それらの取引事例を提示することにより「広大地」としてほぼ認められてきたのです。

ところが平成30年の通達改正では中小工場地区が除外されています。この理由を国税庁は次のように述べています。

中小工場地区は、主として中小工場の工場用地として利用されることを前提とした地区であり、当該地区内の宅地は、中小規模の工業用地として利用されることが標準的であることから、「地籍規模の大きな宅地」の適用対象とはならない。

はたして本当でしょうか?これでは、中小工場地区は全て中小規模工業用地になるのだといっているに等しい暴論です。

現実問題として、後継者がいない工場をそのまま引き続き工場として売却されるケースはかなり限定されます。だから建売用地として引き取られるのです。「旧広大地」の扱いとあまりにも整合性のない評価は見直してしかるべきでしょう。

この問題は次の通り簡単に説明できます。

ここに同じ大きさのAB2つの土地があるとします。

Aは狭い道路に面した中小工場地区内にある地籍規模対象外の土地で、Bは広い県道に面した普通商業・併用住宅地区にある地籍規模の適用地です。

これらを不動産鑑定士が普通に鑑定評価すれば、正面路線価が高いB地がA地より高くなるのが当然です。しかし国税庁のルールでは、明らかに環境条件に劣るA地が「中小工場地区」という理由だけで高くなってしまうのです。全くもって理論が成立しません。

今年のわが事務所は、12/29~1/3の間、年末年始の休みを取っています。

今年は、独り言も1,000回を超えることができました。いつも御愛読ありがとうございます。よいお年をお迎えください。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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