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今年も残りわずかとなってきました。今年一番の税務トピックスは、適用税率や税率ごとに区分した消費税額が記載されたインボイス制度が10月1日にスタートしたことでしょう。

事業者の消費税額を正確に記録するという名目で始まったインボイス制度ですが、事務負担の増大に加え、制度に登録しない小規模事業者が発注元から取引を見直されるという不安の声が絶えません。

国税庁によれば、9月15日までにインボイス発行事業者へ登録申請された件数は累計約403万件に達しました。課税事業者では全体の約9割が登録し、財務省の担当者は「実態として動いていない法人を除けば、ほぼカバーできた」と自信を見せます。一方免税事業者は、想定する160万者の約7割の111万者の登録にとどまっています。

今後の取り組みとして国税庁は、登録するか迷っている免税事業者向けの相談会を全国の税務署で開催するほか、オンライン説明会やウェブ上でのバナー広告なども拡充する方針を示しています。また調査実務にあたっては、軽微な記載不備を指摘するような税務調査は実施しない方針です。

インボイス制度では、事業者が消費税の仕入れ税額控除を行うためには取引先から発行されるインボイスが不可決となります。そのためインボイスが発行できない免税事業者相手の取引では仕入税額控除が行えず、税額分をまるまる自己負担することになるため、免税事業者を取引から排除する可能性がかねてより指摘されてきました。この点につき、公正取引委員会ではインボイスを理由として値下げや取引中止は独占禁止法や下請法に違反するとして監視を強めていますが、実際には10月以降の取引中止を一方的に通告された小規模事業者は後を絶ちません。

政府は経過措置として、免税事業者が課税事業者に転換してから3年間は納税額を軽減するほか、免税事業者からの仕入れでも、免税事業者からの仕入れにつき、令和8年9月30日までは80%控除可、令和11年9月30日までは50%控除可として、税額の一定割合を6年間控除できるようにしています。しかしこれらは時限的なものであり、免税事業者排除の流れは、年々強まることが予想されます。

免税事業者の保護について、閣僚会議を9月に立ち上げて施行状況や課題を定期的に確認し、支援策も検討していますが、実効性を発揮できるかは極めて不透明です。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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