第1217話 負の遺産
相続財産は、現預金や有価証券、または不動産といった、いわゆる「資産」と呼ばれるもので構成されていればありがたいのですが、ときに借金などの「負債」も一緒についてくるときがあります。負債が資産より多ければ、相続放棄をすればよいのですが、放棄しなければ、その負債を資産同様、相続人の間で分けることになります。その時、相続される負債が金銭債務であれば、相続分に応じて分けることになります。
相続放棄は1人ひとりに与えられた権利なので、他の相続人と意思統一する必要はありませんが、後々の関係が悪化しないよう最低限話し合いをしておいた方が良いと思われます。自分の行った相続放棄によって、他の相続人の負担が増える可能性があるからです。
例えば借金1億円を遺して父親が亡くなったとします。相続人が妻と子2人の3人だったとして、それぞれが背負う債務は、相続分に従い、妻5千万円、子2人が2500万円ずつとなります。
ここで妻が相続放棄をしたとすると、子2人の背負う債務が5千万円ずつとなり、借金の額が2倍となってしまいます。もちろんプラスの財産も2倍となるため、単純に損をするとは言い切れませんが。つまりは、関係者全員での話し合いが、その後の関係をよりよくするのに必要不可欠となります。
またこのときに気になるのが、連帯責任の有無です。原則として相続税では、財産をどのように分配しようとも相続人全員が連帯責任を負うことになります。そのため残された借金についても、相続人の誰かが返済不能となったときは他の相続人に返済責任が生じるのではないかという不安が生じます。
これについて判例では、遺産分割が法定相続分と異なる割合で行われたとしても、債務については相続分によって定まるものであり、遺産分割によって勝手に配分されるものではないという判断が一貫してなされてきました。つまり、借金は遺産分割協議の対象にすらならないということです。そして相続分に応じて分割された借金に、各相続人は連帯責任を負わないと判断しています。
相続人にとってはありがたい話ですが、貸した側の立場では、ありがたくない話に一変します。貸した側の立場としては、各相続人の資産の差によって一部回収できない可能性も生じることになるからです。これについては、事前の担保権の設定などで対処するしかありません。
債権者の地位に胡坐をかいていると、取りそこなうおそれもあるので注意が必要です。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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