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 イータックスの普及で自宅から確定申告できるようになった今でも、確定申告期の税務署には大行列ができます。そこに並ぶのが嫌で確定申告を面倒に思ってしまう人もいるのではないでしょうか。

 混雑した税務署に行くことで体調が悪化するとの危惧があったために期限後申告になってしまった納税者に、加算税を賦課するかどうかが争われた事例があります。(平成29年12月19日判決)

 土地と建物を平成28年に売却したAさんは、その譲渡所得について法定申告期限である平成29年3月15日までに申告書を提出しなければならなかったにもかかわらず、申告が期限後になってしまいました。その理由は、申告書の記載の仕方がわからず、税務署で申告相談をしたうえで申告書を作成して提出しようと考えたのですが、確定申告期の混雑している税務署に行くと持病の症状が出て体調が悪くなるおそれがあったためです。Aさんは混雑していないと思われる3月17日に税務署に行き、申告を済ませました。

 これに対して税務署は、確定申告期限を過ぎてから申告したAさんに無申告加算税を賦課しました。Aさんはこの処分について納得がいかず、持病を持っている自分が体調を考慮して期限後申告したことは、国税通則法の規定で期限後申告が認められる「正当な理由」がある行為として、審査請求を申し立てました。

 Aさんの主張に対し税務署は、期限後申告が認められる「正当な理由」があるとするには、納税者の責めに帰することができない客観的な事情がなければならないということを前提にしました。これは例えば、災害や交通・通信の途絶といった外因的事情によって期限内申告の提出が不可能であり、納税者に無申告加算税を賦課することが不当又は酷になるケースが該当するとの解釈です。これに照らして考えると、Aさんの主張する「混雑した場所に行くと体調が悪くなる」という事情は、税務署の見解ではあくまで個人的な判断であり、納税者の責めに帰さない客観的な事情があるとは言えないので、「正当な理由」があるとは認められないというわけです。

 審判所は両者の主張を検討した結果、税務署に軍配をあげました。その理由としては、Aさん自らが混雑した税務署へ行かなくても申告書を提出できたはずというものです。具体的には、税務署に電話で相談したうえで確定申告書を作成して郵送することもできたし、税理士に確定申告書の作成と提出を依頼することも可能でした。そうすれば期限内に申告書を提出することができたというのが審判所の判断です。そのため税務署と同様に、Aさんには「真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情」があったということはできないという結論を下しました。

 確定申告間際の税務署の混雑は大変なものであり、持病がある人が体調を考慮して「空いている日に行こう」という判断をしてしまう気持ちはよくわかります。電話で相談しようにも、なかなか繋がらないという問題はいまだに解決していません。しかしそのような個人的事情をすべて考慮してもらうわけにはいきません。混雑が問題であれば、税理士への依頼やイータックスの利用を考える方がよさそうです。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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