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 相続税の節税の王道ともいえる生前贈与と生命保険を組み合わせるスキームがあります。その方法は

  • 子供が子供自身を受取人とする生命保険に加入する
  • 贈与税の非課税範囲内である110万円を限度として子に現金を毎年贈与する
  • ②の現金を①の生命保険の保険料として子供が払い込む形にする

というものです。

 無税の範囲内の生前贈与のため、贈与税はかからずに被相続人の相続財産を減らすことができますし、子が将来受け取ることができる生命保険金は、子が保険料を支払っている形ですので、一時所得として課税されるため、有効な節税となり得ます。

 このスキームは広く行われているものの、大きく2つのリスクがあります。1つは、保険料を支払う者は、名義人ではなく実質的に判断されるということです。先の通り、子が保険料を払っていればこのスキームが成立しますが、被相続人である親が保険料を支払っていると、子がもらう生命保険については、親から贈与ないし相続により取得したものとみなされます。こうなると節税効果がなくなりますので、あくまでも子が支払っているという実態が必要になります。この実質判断の必然性については、国税の内規にも明確に書かれていますので、あらかじめ対策をとっておく必要があります。

 もう一つは、毎年贈与する、すなわち連年贈与のリスクです。現金ではなく定期金給付契約の贈与をしたと国税から認定されないようにしなければなりません。定期金給付契約であると認定されてしまいますと、将来もらう現金の総額をベースに計算した財産を、贈与がスタートした時点で、一括で課税しますので、多額の贈与税が課されてしまいます。

 この2つのリスクを回避するには、上記②の子に対する現金の贈与について、連年贈与ではなく毎年その都度贈与する贈与契約が成立していることを立証するより他にありません。毎年その都度贈与していたことが証明できたのなら、連年贈与のリスクはもちろん、子が贈与を受けた金額でその自由意思で保険料を支払っていることになりますので、実質的な保険料の支払者も子になりますので、被相続人が保険料を負担したことにはなりません。

 具体的には、毎年贈与契約書を締結する、贈与を受ける口座及び保険料を支払う口座を子が独自に管理する、毎年贈与税の申告をするといった対応が考えられます。

 このスキームの否認事例として、毎年贈与税の申告をしていたことが決め手になり、課税が取り消されたものがあります。このため、110万円以下の贈与で納税額がゼロであっても贈与税の申告を毎年しておいた方が有利に働くと思われます。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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