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このほど国税庁が発表した税務調査の実績によりますと、一昨年から去年にかけてはコロナ禍で思うように調査を行えず、件数、追徴税額ともに前年から大きく減少している状況が明らかになりました。しかしそうした中でも一件当たりの追徴税額や、いわゆる「お尋ね文書」の件数などは前年から大幅に増加しており、限られた条件下で最大限の成果を上げようとする当局の狙いが見て取れます。今後、国税当局はどのような「戦略」で納税者に迫るでしょうか。

この発表された実績は過去1年間の税務調査の実績をまとめたもので、コロナ禍でいかに当局が納税者から税を〝徴収〟してきたかが分かるものです。

それによりますと2020年7月~2021年6月の1年間で行われた相続税の実地調査は5106件で、前年度の1万635件からは52%減となりました。申告漏れ所得金額は1785億円で、こちらも前年度の3048億円から4割以上減少しています。

一方1件当たりの追徴税額は過去10年間で最高額となり、所得税や法人税同様に、コロナ禍で実地調査を減らさざるを得ないなかで1件当たりの〝取れ高〟を重視する当局の姿勢が表れた格好です。

2020年事業年度の実地調査1件当たりの追徴税額は943万円と、前年度の641万円に比べて147.3%の実績となりました。当局は「新型コロナウイルスの影響により、実地調査件数は大幅に減少しましたが、大口・悪質な不正が見込まれる事案を優先して調査」したとしています。

こうした1件当たり追徴税額の大幅な増加は所得税、消費税、法人税などの調査実績でも明らかとなっていて、「ウイズコロナ」の一貫した調査方針であることが分かります。

さらに実地調査以外の書面や電話による連絡や来所依頼に基づく「簡易な接触」は1万3634件と前年度の8632件から6割近く増加しました。申告漏れ所得金額でも前年比3割、追徴税額でも5割以上伸び、実地調査の減少を簡易な接触の増加によって少なからずカバーしています。こちらもコロナ禍で接触機会を減らしながら成果を挙げられる手法としてさらに利用されていきそうです。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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