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 明日7月3日に新紙幣が発行されます。肖像画のモデル変更に加え、偽造防止のための新技術による透かしや3Dのホログラムなどが導入されます。当然ながらレジ、自動券売機、両替機などは新紙幣への対応が必要となりますので、今回の特需で活況に沸く業界がある一方、対応のためのコストにあえぐ事業者も多くなりそうです。

 新紙幣の発行に伴い、特需に沸くのがATMやセルフレジ、両替機などの関連業界です。例えば貨幣識別アルゴリズムを強みとする貨幣処理機メーカー「日本金銭機械」は、直近3年間で株価が約2倍にまで上昇しました。同じくATMを手掛ける「OKI」でも、去年の生産台数が倍増したそうです。この好況は、パチンコ周辺機器や自販機メーカーなどにも及んでいます。

 一方、新紙幣への対応が重荷になっている中小企業も多く存在します。その代表的な業種としては飲食店やパチンコ店などが挙げられます。飲食店で多く導入されている自動販売機の更新には1台当たり100万円以上かかります。

 ただでさえ物価高騰で資金繰りに苦しむ中小企業者にとって、新紙幣への対応はさらなる負担になります。新紙幣発行を機に現金の取り扱いをやめ、キャッシュレス決済へと完全移行が進むことになるかもしれません。いずれにせよ何らかの出費は避けられません。そこで考えたいのが、補助金の活用です。

 例えば中小企業の省力化を支援する「中小企業省力化投資補助金」は、パネル式券売機の導入に最大1500万円を補助します。今年の申請受付はまだ始まっていませんが、例年にならえば第一回公募の採択率は7割超えと高いため、利用したいなら申請受付が始まり次第、手続きを行うのがよさそうです。

 また昨年10月にスタートしたインボイス制度への対応と組み合わせれば、インボイス制度に対応した会計ソフトなどの導入にあわせて券売機などを取得することで、IT導入補助金の「インボイス枠」が活用できます。こちらの補助上限は20万円です。

 税務上、新紙幣に対応するための機器の切り替えは、全額を修繕費として処理することができます。国税庁は「システムに従来備わっていた機能の効用を維持するために必要な修正を行うもので、新たな機能の追加、機能の向上等に該当せず、これらの修正に要する費用は修繕費として取り扱われる」と明示しています。

 当然ながら、これまでも幾度とあった貨幣のリニューアルと同様に、新紙幣が発行されるからといって旧紙幣が使えなくなるわけではありませんので、今後の詐欺には注意してください。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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