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 税理士からクライアントに税務上の節税について提案しようとすると、「法令上問題ないか」と相談を受けることがあります。その際、法令上問題なしだとしても、税務当局がこの節税についてどのような動き方をするかという想定についてまで検討する税理士はあまりいません。税務当局は、合法な節税でも何らかの方法で潰そうとしますから、検討している節税を実行した場合に税務当局がどのような否認を考えるのか、それをあらかじめ想定しておく必要があります。

 少し脱線しますが、先日、学校法人から自己が実質的な経営者である医療法人に送金した資金について、税務調査で自身の給与に当たるとして源泉所得税が課税された事例があります。学校法人が理事長個人に送金した場合であれば、給与として課税されるのは理解できますが、本件は医療法人に送金していますので、給与には当たらず、寄付金として課税されるべきものです。

 税務当局が給与とした理由としては、学校法人から医療法人に送金された後、医療法人が50分以内に理事長個人に同額の送金をしたからと指摘されているようです。しかしそれならば、医療法人が理事長に支払った給与になるはずで、学校法人の送金額は寄付金のはずです。この案件については、税務当局の実務を考えれば、この課税の意味が見えてきます。

 その理由は、本件の税務調査対象が医療法人ではなく、学校法人になされたからでしょう。学校法人は、法人税においては公益法人とされ、収益事業に対してのみ課税されます。課税所得が限られますので、医療法人への送金について、経費としていなかったと想定されます。税務当局の調査官としては、自分が調査した法人から税金を取れなければ面白くありませんから、送金について寄付金課税で追徴課税ができない以上、源泉所得税を取れる給与として、学校法人に課税することとしたと思われます。

 租税法律主義という言葉があるため、忘れがちですが、税務調査における課税は、税務当局の調査官の事情が前面に出て、税法は後回しになりがちです。だからこそ税務調査官の立場を想定することが必要になってきます、彼らがどんな理屈で税金を取ろうとするのか、まずそれを想像し、必要な対策を用意しなければなりません。その際に必要なのは、検討している節税について、調査官が法律を無視してでも課税するというインセンティブが働くかどうかです。

 具体的には、節税する額が多額になるかどうか、法律の抜け穴を突くような安易さがあるかどうかが問題となります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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