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 去年、英エリザベス女王の死去に伴い、総額620億円ともいわれる個人資産及び約5兆円の王族の資産がチャールズ新国王に引き継がされました。気になるのが莫大な資産の承継に伴う税金ですが、英国の制度では、チャールズ国王に相続税はかかりません。

 エリザベス女王の資産の正確な規模は定かではありませんが、英誌が去年5月に発表した長者番付によりますと、エリザベス女王の公表されている範囲での純資産は約620億円でした。      資産は美術品、宝石、投資不動産、所有不動産などが大半を占めます。

 世界的に見ますと相続税がある国は少数派ですが、英国はその一つです。一定以上の額を相続するときには40%の税率が課されることとなり、そのルールに従えば今回、新国王は約250億円の相続税の納税義務が免除されたことになります。

 この国王の相続は非課税とするルールは、1993年に導入されました。当時、短期間に2人の国王が死去してしまうと王族が破産する可能性が指摘され、それを避けるため設けられたルールによります。エリザベス女王の母親であるエリザベス王太后が死去した2002年にこのルールが初めて適用され、約113億円の資産を受け継いだ女王は税負担を免れています。今回は2度目のルールの適用となります。

 英国に冠たる女王の資産が620億円というのは少ないように感じられるかもしれませんが、これらの個人資産とは別に「クラウンエステート」と呼ばれる王室所有の土地や所有物があります。このクラウンエステートの総額は約5兆円にも上るとされ、すべてがチャールズ国王に引き継がれるものです。例えば時価1000億円を超え、年間40億円ほどの不動産収入を生み出すランカスター公領がすでに新国王に相続されています。これらのクラウンエステートについても、私有財産ではありませんのでチャールズ国王は相続税を納める必要がないことになります。

 なお、英国とは異なり、日本の皇室は原則として相続税を納める必要があります。上皇は昭和天皇から遺産約9億1千万円を相続した際に約4億2800万円の相続税を納めました。ただし皇室経済法には非課税扱いとなる財産が規定されており、その中には、三種の神器も含まれています。

 ただこの非課税扱いの規定が、相続税のみの規定であったため、2019年に今上天皇への譲位が行われた際には三種の神器に高額の贈与税がかかる可能性がでてきたので、急いで退位に係る特例法に「三種の神器については贈与税を非課税にする」との規定を盛り込んだ経緯があります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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