小規模宅地等の特例の適用けるためには、相続税の申告が絶対条件です。しかし、この特例を受けると相続財産の課税価額が基礎控除内となるために、相続税の申告は不要だと考えていると、税務署からお尋ねを受ける場合があります。しかし、その後に、申告を行っても、この特例を受けることは可能であります。それは、「相続税の期限後申告の特則」があるからです。以下では、これについて解説します。
そもそも小規模宅地等の特例とは、被相続人が居住の用に供していた宅地等を個人が相続により取得した場合、相続税の課税価額を算定する際に、その宅地の課税価額を一定面積まで一定割合を減額するという相続税の軽減制度のことをいいます。
例えば、被相続人が居住の用に供していた宅地を相続人が相続により取得した場合で、小規模宅地等の特例の適用を受ける場合には、その相続税評価額は、330㎡を上限として、本来の評価額から80%を減じた価額となります。
租税特別措置法第69条の4第6項において、この小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、相続税の申告期限内に、申告書にこの特例の適用を受けようとする旨の記載をした上、計算に関する明細書その他財務省令で定める書面を添付して、税務署に提出することが必要であると規定しています。
さらに、同項の括弧書きにおいては、小規模宅地等の特例を受けるための申告書には、期限後申告及び修正申告を含むと規定されています。つまり、小規模宅地等の特例の適用を受けるための申告書は、期限後申告でも構わないということになります。そして、これが、「相続税の期限後申告の特則」の特例となります。
小規模宅地等の特例の適用を受けた場合には、相続財産の価額が相続税の基礎控除内に収まるけれども、特例の適用を受けない場合には、基礎控除額を上回るため、相続税の支払義務が生じるということがよくあります。
この場合、小規模宅地の特例の適用により、相続財産の価額が基礎控除内となるので相続税が発生しないので、相続税の申告が不要だと判断し、相続税の申告及び特例適用の手続きを行なっていないと、特例の適用が受けられず、相続税の支払いが命ぜられます。
しかし、相続税の期限後申告の特則があるために、申告書の提出及び特例適用の手続きをしなかったために相続税が発生した結果、税務署からお尋ねがあり、それに対応して申告書の提出及び小規模宅地の特例の適用を受ける手続きをした場合でも、この特例の適用を受けることが可能となります。
それでは、申告期限内に遺産分割協議が整っていない場合にはどうなるかは次回にご説明します。