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 去年12月に内閣が決定した2020年度税制改正大綱では、海外に資産を持つ人が提出する「国外財産調書」制度の厳格化や、国外不動産を利用した節税手法の規制が盛り込まれました。日本人が海外に持つ預金口座や不動産などの海外資産に対する監視は近年強まるばかりですが、今年4月に施行される2020年度税制改正をもって、包囲網がいよいよ完成すると見る向きも強くなっています。

 国税庁はこのほど海外税務当局との情報交換制度である共通報告基準(CRS)によって、海外に銀行口座を持つ日本居住者の情報を新たに189万件入手したと発表しました。CRS導入の初年度である2018年の情報交換は74万件だったところから、1年で倍以上に増えています。

 現在、資産家の海外資産を監視する取り組みは急速に進んでいます。もちろん、所得や財産に応じた税負担を違法に免れるような脱税は取り締まるべきですが、あくまで合法な海外資産についても監視が強まり、節税手法も封じられつつあるのが現状です。

 現在の取り巻く「包囲網」は、まさに「水を漏らさぬ」といった状況です。例えば国内にある資産を海外口座に移そうとすると、100万円以上であれば、「国外送金等調書」の提出が義務付けされます。そして送金した資産や国外で形成した財産のトータルが5千万円を超えた時点で「国外財産調書」の提出義務が生じます。これは5千万円を超える海外資産を持っている限り、毎年提出しなければなりません。

 こんな窮屈な国にはいられないと、財産を持って海外に出ようとすると、日本を出る時点で含み益に課税する「国外転出時課税」の対象となります。一時的に国を出て株式などを売却しても、この税金が課税されることになります。

 相続に関しましても、海外移住によって日本の税制から離脱するのは難しいと言えます。財産を残す側と相続する側が、ともに10年を超えて海外に居住しないと日本の相続税を納めなければなりません。それが相続税対策であるか否かは関係ありません。

 また納税者が知らないところでも、海外資産の情報は筒抜けです。冒頭に述べたCRSにより、海外にある銀行口座の情報は年に一度、自動的に国税庁のもとに送られてきます。

 CRS以外でも、利子配当や不動産賃借、株式などの法定調書に基づく情報提供が年間15万件以上行われ、その他、要請による情報交換などは年々数を増やしています。調書を出さなければバレないなどという考えは、もはや時代遅れです。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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