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 ロックバンド「ウルフルズ」のトータス松本さんが代表取締役を務める会社が、雇用調整助成金の不正受給を国から指摘され、1億円超を返還していたことがわかりました。

 雇用調整助成金とは、景気変動や産業構造の変化など経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた使用者に対して、労働者を解雇することなく雇用を維持する目的で、国が休業手当などの賃金の一部を助成する制度です。

景気の悪化などで仕事量が減少、あるいは無くなったことにより、労働者を一時的に休業させたり、該当期間を研修期間として教育訓練を受けさせたり、出向させたりするなどの措置を行い、労働者の雇用を維持した場合に、国から使用者に対して休業手当の一部または全部が助成されます。新型コロナウィルスの感染拡大で要件が大幅に緩和され、多くの事業者がこの助成金を受け取っています。

トータス松本さんは2018年から、義父が創業したアパレル会社の代表取締役に就任し、社長職を務めていました。不適切な助成金の申請があり、1億円超を返還したことは認めたものの「情けない話ですけど、何も知らなかった。報告も受けていなかった」と釈明。その後、所属事務所を通じて、同社の代表取締役を辞任したと報告しました。

このように友人や恋人、お世話になっている親せきや知人に頼まれて名義貸しで会社の代表者になってほしいと頼まれ、断りにくい環境下でやむなく承諾してしまう方も多くみられますが、一旦引き受けてしまうと取り返しのつかないリスクを持つことになります。

新会社法が施行されてからは、会計監査人を置かない法人に関しては、取締役1名でも株式会社を設立することができるようになりました。つまり以前よりも簡単に会社が設立できるのにもかかわらず、名義貸しを依頼するというのには、それなりの理由があるのです。名義貸しを頼まざるを得ない状況として主に6つを挙げてみます。

1. 法律的にギリギリの商売又は犯罪を行うために依頼者が自分で法的なリスクを取りたくない場合(トータス松本さんのケースに当てはまります)

2. 価値のない商品を売ったりする予定があり、クレームが多く寄せられることが容易に想像でき、自社以外の会社を設立する場合

3. 過去に破産の経験があり、債権者からの連絡を恐れ、自分の名前を表に出せない場合

4. その他の理由(闇金からの取立てなど)で、自分が法人経営をしていることを他者に知られたくない場合

5. 会社が持っている権利をはく奪された場合に、他の会社を作り対応できるようにしておきたいため

6. 脱税目的で新会社を作り、自分の会社と関係性をなくすため

 

 ろくなものじゃありません。

 雇用調整金の不正受給は今年3月時点で累計3051件発覚し、その合計額は約690億3千万円に上っています。そのうち約512億9千万円が返還されています。

 

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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