第1103話 軍用地

自衛隊や米軍の基地などが建ついわゆる「軍用地」は、全てが国有地というわけではなく、一部は民間の法人や個人から借り上げて利用されています。その際には回収が確実な国に対する賃料が発生しますので、それを目当てに軍用地をわざわざ購入する不動産オーナーも多くみられます。この軍用地は通常の事業用地に比べて固定資産税評価額も低く、相続税も大幅に抑えることができます。
沖縄に所在する米軍基地用地で、国と賃貸策契約を結ぶ土地オーナーのうち、約1割は県外の地主とのデータを去年地元紙が報じました。沖縄県外の地主の割合は10年間で1.7倍に増加しています。
不動産投資で近年注目されているのが軍用地です。軍用地投資は有名人でも行っている人が多く、2022年には沖縄県出身の仲間由紀恵さんが、軍用地投資で約7000万円の収入を得ています。また同じ沖縄出身で現参院議員の今井絵理子氏も軍用地投資を行っています。
米軍の基地などが建つ「軍用地」は、全てが国有地というわけではなく、一部は民間の法人や個人から借り上げて利用するという形をとっています。もちろんその際には確実に回収可能な賃料がもらえます。
ただし軍用地という特殊な用途に使われるため、オーナーであっても土地の利用状況に口出しはできません。実際にどのように使われているのかを詳細に確認することも不可能です。だが裏を返せば、通常のアパート経営などでは必要不可欠なわずらわしい管理業務から完全に開放され、修繕・リフォームといった維持費も一切かかりません。また地代収入であるため、建物の老朽化といった賃料減少リスクとも無関係です。
借主が国なので銀行からの担保評価が高く、購入に当たっても融資を受けやすくなります。金融機関によっては軍用地専門のローンを組むことができ、高額な融資を比較的低い金利で受けられるケースも多くみられます。
さらに賃料に当たる借地料が定期預金の金利の3倍前後のペースで上がり続けています。沖縄県内の主な米軍基地や自衛隊基地の借地料を見ますと、嘉手納飛行場、普天間飛行場、航空自衛隊那覇基地、キャンプ瑞慶覧など、直近10年で軒並み2倍以上に値上がりしています。
そして軍用地投資は、相続税対策にも役に立ちます。軍用地は「公用地」なので、固定資産税評価額は通常の事業用地と比べて半額程度になります。さらに土地オーナーであることから、土地評価算出の際には、借地権割合を差し引くことができます。軍用地のように使用期間の定めのないケースでの借地権割合は4割となりますので、ただでさえ低い固定資産税評価額から、さらに4割差し引いたものが最終的な相続税評価額となります。
反面デメリットもあります。利回りの面からみると、軍用地の表面利回りは平均2%前後で、通常の賃貸アパートに比べて「ローリターン」な面を否めません。
総じて利回りは低いが安定性が高く、相続税対策としても有効というのが軍用地投資の魅力となります。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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