第1104話 内閣官房機密費
内閣官房機密費は,内閣官房長官の政治判断によって支出される経費として,国民の税金から毎年12億円以上が予算に計上され,国庫から月約1億円が継続的に内閣官房長官に支出されてきました。内閣官房長官は毎月約1億円の税金を、使途を全く明らかにせず自由に使っているのです。ただし、これは予算上の数字で、実際にはそれに加えて、年間約55億円の外務省の「外交機密費」の一部(=約20億円)が上納されているので、官邸の機密費の総額は30億円をゆうに超えるとみられています。
石川県の馳浩知事が、五輪招致をめぐり、IOC(=国際オリンピック委員会)の委員に“政府の機密費を使ってアルバムを渡した”と発言し話題となったことはまだ記憶に新しいところです。
このような巨額なお金はいったい今までどのように使われてきたのでしょうか。納税者である私達には当然に知る権利があると思うのですが、機密費は「国の事務を円滑かつ効果的に遂行するために機動的に使用する経費」とされ、使途が一切公表されていません。「機動的」に使用するといいながら、毎年ほぼ全額消化する対応は「計画的」ですらあるといえます。実際に年度内に使いきれず、国庫に返納した金額は2021年度の19万9174円が最大となっています。
裏金化している内閣官房機密費ですが、これについては過去に内閣官房機密費情報公開訴訟が行われています。裁判になってはじめて,官房機密費の支出が、官房長官自体が出納管理をする「政策推進費」,事務取扱者にさせる「調査情報対策費」,「活動関係費」という3類型に分類されていることが明らかになりました。最高裁の判決では、国側が抵抗を示していた官房機密費の本丸である政策推進費に関する文書を開示せよという内容判決でした。
この情報公開によって菅義偉首相が官房長官在任中の2822日間に支出した総額は86億8000万円に上ることがわかっています。
これは1日当たり平均307万円を使い続けていたという途方もない額になります。政府には一定程度、機密性が高いお金は必要だと思いますが、全くチェックされずにこの金額が支出されているというのは許されないことではないでしょうか。国家財政が厳しいなどと言っているさなかに、いつまでこのような高額な使途不明金の支出を放置しておくのでしょうか。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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