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 マイナンバーカードを健康保険証として使う「マイナ保険証」への移行を巡り、政府は健康保険証を今年12月1日で廃止する方針を固めています。翌2日以降、新規発行はしません。

 マイナンバーカードは、総務省によれば、今年4月末現在で国民1億2542万人に対して9911万枚交付され、9238万枚保有されており、保有率73.7%となります。

 またデジタル庁によれば、今年1月時点でマイナンバーカードと保険証を紐付けしているマイナ保険証の登録割合は77.9%になります。ただしマイナ保険証を携行する人は、人口全体の4割で、カード保有者の5割しかいません。一方、厚生労働省によれば、マイナ保険証の利用率は4.99%でした。

 ここで今まで紙で使われてきた健康保険証と顔写真とICチップがあるマイナ保険証を紛失した時のリスクを比較して考えてみましょう。

 マイナ保険証を紛失しても、健康保険証の情報(加入組合、健康保険番号など)は、パスワードがないとわかりませんが、健康保険証を紛失しますと、情報が取得者にばれてしまい、悪意があれば健康保険証が偽造されてしまいます。偽造された健康保険証には顔写真がないので、他人がなりすまして使用しても、健康保険証の紛失情報が医療機関に行きわたらなければ、不正利用がわかりません。不正利用があると、診療の自己負担分を除く保険部分は国民の負担となります。

 ICチップの中に個人情報が満載と思っている人も多いですが、実はICチップに記録されている情報は、カード面に記載されている情報(氏名・住所・生年月日・性別・個人番号・本人の写真など)や公的個人認証の電子証明書など限られたものです。もし落としたとしても、クレジットカード同様にコールセンターに電話して一時停止するだけです。

 一方、健康保険証を紛失したら、最寄りの警察署へ紛失届を出さなくてはなりません。顔写真やICチップのない保険証は悪用されやすく、勝手に医療費が使われたり、身に覚えのないローンが組まれていたりすることもあります。

 政府が目先の利用率向上に血まなこになるより、地道に広報し、国民が理解すれば、自ずと利用率は高まると思われます。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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