第1129話 生前贈与の有効性

相続税対策には、生前贈与が有効といわれています。ですが、仮に1千万円の財産を子供に引き継ぐ場合、控除などを抜きにするなら相続税の税率は10%ですが、それに対して同じ額の生前贈与にかかる税率は30%となります。単純に考えると、相続税の方が得になりそうですが、なぜ生前贈与が相続対策に有効となるのでしょうか。
例えば相続人が子ども2人だけの父親が亡くなって5億円の財産が残されたとします。この場合、課税財産から差し引けるのが基礎控除額だけだとして、2人が納めるべき相続税の額は単純計算で計1億5210万円となります。
しかし父親が息子たちに1千万円を生前贈与していれば、子への1千万円の贈与にかかる税率は30%で、基礎控除額などを差し引いて税額は177万円。その一方で、1千万円減った遺産4億9千万円にかかる相続税額は1億4760万円となり、贈与前より450万円相続税額が安くなり、結果として273万円の節税となります。
この謎を解くヒントは、相続税は亡くなった人の財産の総額に対して課されるという点にあります。つまり同じ1千万円でも、課税対象となる財産の総額が1千万円であればそのまま相続税は10%で計算されますが、例に挙げたような5億円の財産を持つ人の1千万円にかかる相続税率は、実質的に45%に達してしまいます。その分が節税となるわけです。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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