第1130話 生命保険の受取人

独身時代に、親を保険金受取人として生命保険に加入した男性が、結婚後も受取人を妻子に変更するのを忘れて、そのまま不慮の事故で亡くなったとします。
その後、親が「残された妻子が受け取るべき」として保険金をそのまま妻子に渡したとすれば、どのような課税関係が生じるのでしょうか?
「生命保険金は受取人固有の財産」とする相続税法の規定に従えば、保険金が親に支払われた時点で相続税が、さらに親から妻子に渡された時点で贈与税がかかるという二重課税が発生してしまいます。
そこで相続税に関する取扱いを定めた基本通達においては、受取人の変更手続がされていなかったことに「やむを得ない事情」があれば、契約上の名義人ではなく実際に受け取った人を保険金受取人と認めるとしています。この事例のように「うっかり」による失念も、やむを得ない事情として認められています。
受取人の変更が認められるには、契約上の受取人である親が同意しているなど、関係者の合意があることが大前提です。
例えば、離婚した妻から現在の妻に名義変更をするのを忘れていたというケースでは、財産の奪い合いになる可能性も考えられます。契約内容の変更は忘れずにやっておきたいものです。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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