第1137話 生命保険の契約者貸付金

生命保険の「契約者貸付制度」とは、契約している保険の解約返戻金を担保に、融資を受けられる制度です。契約者本人だけが利用できます。お金がなくて、保険契約を続けたい場合に、保険会社が契約者に解約返戻金の一定範囲内の金額を貸し付け、保険契約を継続することができる制度です。生命保険の契約者貸付には、次のようなメリットがあります。
- 保険契約の解約が不要
- 低金利で返済方法が自由
- 借入時の審査が不要
一方、次のようなデメリットもあります。
- 本来支払われる保険金・給付金から返済額と利息が差し引かれる
- 貸付の元利合計が解約返戻金の額を超えると、保険契約は失効する
次に契約者貸付金がある場合の保険金の課税関係について例を参考に見てみましょう。説明を簡単にするために、利息は考慮しないことにします。
(1)被相続人が保険契約者であった場合
- 被相続人:夫
- 保険契約者(保険料負担者):夫
- 被保険者:夫
- 保険金受取人:妻
- 死亡保険金:1千万円
- 契約者貸付 :夫が100万円借入
相続税の課税対象は、1千万円-100万円=900万円となります。
(2)被相続人以外が保険契約者である場合
①保険契約者と受取人が同じ場合
- 被相続人:夫
- 被保険者:夫
- 保険契約者(保険料負担者):妻
- 保険金受取人:妻
- 死亡保険金:1千万円
- 契約者貸付 :妻が100万円借入
この保険契約では、夫死亡時に900万円が妻に支払われますが、契約上の死亡保険金1千万円が所得税の課税対象となり、ここから払込保険料と特別控除額50万円を差し引いた残額を1/2にして税額を計算します。
②保険契約者と受取人が異なる場合
- 被相続人:夫
- 被保険者:夫
- 保険契約者(保険料負担者):妻
- 保険金受取人:子
- 死亡保険金:1千万円
- 契約者貸付 :妻が100万円借入
この保険契約では、夫死亡時に子に900万円が支払われますが、子が受け取った900万円には贈与税の課税対象となり、妻が借り入れた契約者貸付金100万円は、所得税の課税対象となります。
次に満期保険金について考えてみます。
- 保険契約者(保険料負担者):夫
- 被保険者:夫
- 保険金受取人:妻
- 死亡保険金:2千万円
- 満期保険金:200万円
- 契約者貸付 :夫が100万円借入
この保険契約で満期を迎えた場合には、満期保険金200万円から契約者貸付100万円を差し引いた100万円が妻に支払われ、この額が贈与税の課税対象となります。
夫が借り入れた契約者貸付100万円は、夫の所得税の課税対象となります。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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