第1152話 複数の者からの贈与があった場合の基礎控除

複数の者(贈与者:A、贈与者:B)から贈与があった場合について考えます。
⑴AとBが暦年課税を選択している場合
暦年課税の場合、贈与税はその年の1月1日から12月31日までの1年間に、贈与により取得した財産の価額の合計額から暦年課税に係る基礎控除額110万円を控除した残りの額に対して課税されます。この場合の暦年課税に係る基礎控除額は、贈与をした人ごとではなく、贈与を受けた人ごとに1年間で110万円となります。 したがって、1年間に複数の人から贈与を受けた場合、その贈与を受けた財産の価額の合計額から控除できる基礎控除額は贈与者の人数に関わらず110万円となります。
つまり、贈与者ABからの贈与額の合計額が110万円までは贈与税がかからないことになります。
⑵AとBが相続時精算課税を選択している場合
相続時精算課税を選択した場合、贈与税は相続時精算課税の選択に係る贈与者(「特定贈与者」といいます。)ごとにその年の1月1日から12月31日までの1年間に、贈与により取得した財産の価額の合計額(課税価格)から相続時精算課税に係る基礎控除額110万円を控除し、特別控除額2,500万円(前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した残りの額に対して贈与税が課税されます。
この場合の相続時精算課税に係る基礎控除額は、贈与をした人ごとではなく、贈与を受けた人ごとに1年間で110万円となります。したがって、1年間に複数の人から相続時精算課税に係る贈与を受けた場合、110万円を特定贈与者ごとの贈与税の課税価格で按分し、その按分した基礎控除額をそれぞれ特定贈与者から贈与を受けた財産の価額から控除します。なお、特別控除額については、贈与を受けた人ごとではなく、贈与をした人ごとに累積で2,500万円まで控除することができます。
相続時精算課税制度適用年においては、贈与者ABからの贈与額の合計額が5,110万円(2500万円+2500万円+110万円)までは贈与税がかからないことになります。
⑶AとBのどちらか一方が相続時精算課税を選択している場合
贈与者Aが暦年課税を選択し、贈与者Bが相続時精算課税を選択した場合について考えてみましょう。この場合、Aからの贈与は「暦年課税の基礎控除」を、Bからの贈与は「相続時精算課税の基礎控除」を適用できます。つまりAから110万円、Bから110万円の贈与を受けたとしても、基礎控除額の範囲内であるとして贈与税は課税されません。
Bの相続時精算課税制度適用年においては、贈与者ABからの贈与額の合計額が2,720万円(2500万円+110万円+110万円)までは贈与税がかからないことになります。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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