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 わが国では、憲法30条にて「納税の義務」が定められており、これにより私達には納税の義務が生じます。税に関する決まりごとは複数の法で定められており、その法を総称して「租税法」と呼びます。そして、租税法の基本原則となるのが「租税法律主義」と「租税公平主義」です。

 憲法84条において「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と規定しています。この条文から租税の賦課・徴収は法律に基づくことなしには、国民は租税の納付を要求されないということがいえます。つまり、その賦課・徴収は必ず法律に基づいて行わなければならないという考えを「租税法律主義」といいます。

 この租税法(以下税法という)は、国会の承認を得て、法律として制定されます。ただし私たちの身近な生活すべての事象を網羅して法律を制定することは不可能なので、税務当局は税法の解釈や適用方法について指針や指示を示します。これを通達と呼びます。税法は包括的に、通達は網羅的にといったところでしょうか。つまり通達は法律ではありませんので、法的拘束力はありません。しかし、税務の執行機関は通達に拘束されます。運用も通達に従わざるを得ません。

 そこで税務調査において、通達に縛られている税務当局と法律の解釈を巡っての税理士との戦いの場が生じるのです。私はこの点、どんなにAIが発達しようと、税法をきちんと理解されている税理士ならば、税理士の仕事はなくならないと考えています。

 このようなことを書くと、難しい税法は税理士にとって都合がいいため、税理士の利権で税の簡素化が実現せずに日本に悪影響を与えていると考える方もいるかもしれません。しかし税理士にとっても税の仕組みを簡単にしてもらった方が、負担が軽くなるため歓迎する先生も多いはずです。そして何より、税理士には税法を決める権力などありませんので、このような批判はあたらないと思います。

 正直に言いますと、税の簡素化が進まないのは、財務省や政治家が税収を減らさないようわかりにくい税法を作っているように感じます。その典型が今年度税制改正による基礎控除の特例です。本来は一律基礎控除を引き上げるだけで済む改正なのに、この制度は時限措置かつ所得金額に応じて異なる取り扱いとしており、複雑怪奇な内容になっています。もっと簡単な税法を作れるのに、こんな読むのも嫌になる内容を作り、国民の理解を困難にして批判をしにくくしていることのように私には思えて仕方ありません。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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