第1214話 相続税の税務調査
国税庁が発表した2024年度の「相続税の調査等の状況」によりますと、相続税の追徴税額は、実地調査が前年度比12.2%増の824億円、簡易な接触が同13%増の138億円で、過去最高となりました。特に無申告事案の追徴税額は、同15.3%増の142億円に上り、これも過去最高となっています。
簡易な接触は、税務調査の〝効率化〟を図る目的で、申告が必要と思われる納税者や計算誤りなどがあるとみられる納税者に対して行われています。以前は、実地調査の件数が、簡易な接触の件数を上回っていましたが、今では完全に逆転し、調査手法が様変わりしています。
簡易な接触がきっかけで発覚した申告漏れなどの非違は、前年度比14.1%増の5796件発覚しています。
簡易な接触をきっかけにして、大口の事案に発展するケースもあります。名古屋国税局管内では、税務署が相続人あてに照会文書を送りましたが、被相続人の財産は基礎控除額以下であるとの回答がありました。しかし、被相続人名義の預金口座から相続人やその家族名義の預金口座へ多額の預金が移動していることを当局が把握していたため、調査に着手しました。臨宅調査で相続人に預金の使い道などを聴取しましたが、あいまいな回答に終始したため、現況調査へ移行し、相続人等の取引金融機関や残高などが記載されたノートを発見。再度説明を求めたところ、税務署への回答が虚偽であることを認めました。申告漏れ課税価額は約7億2千万円、追徴税額は重加算税込みの約4億3千万円でした。
簡易な接触は贈与税の調査でも多く行われています。
簡易な接触の増加について、国税当局は「対応できる事務量が限られているため、効率的、効果的な事務運営を目指すなかで、自然と件数が増えてきた。様々なツールを使うことで納税者に幅広くアプローチすることができている」としています。
他の税目では、AIを使った調査が定着してきていますが、相続税の調査は、これから活用が本格化します。国税当局は、「相続税でも簡易な接触とあわせ、効率化につながるのではないか」と目論んでいます。
相続税の税務調査の場合、高い確率で申告漏れが指摘されます。非違割合は実に82.3%となっています。
また、2024年分の「相続税の申告実績」によりますと、課税割合は10.4%、相続財産の35%は現預金であることがわかっています。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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