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 今回の相続に係る民法改正では、「金融機関の仮払い制度」も設けられました。個人的には、これが現実の相続の現場では大きいように感じています。というのも、現状では、遺産分割協議が成立するまで原則として銀行などの金融機関は、故人の遺産の払戻や名義変更に応じない、いわゆる「口座凍結」となるためです。そのため、生活費の確保や葬儀費の支払いに支障を来すケースが少なくありません。こうした場合、長男が一時費用を負担したり、兄弟で分担したりと手間がかかることになります。

そこで、遺産分割協議が終わる前でも、生活費や葬儀費用の支払いなどのために故人の預貯金を金融機関から引き出しやすくする「仮払制度」が創設されました。

仮払い制度には①家庭裁判所への申立てによる方策と②家庭裁判所の判断を経ず単独で預貯金の払戻しを受ける方策が設けられます。ただ、②の場合は、払戻し額に上限があります。上限額の計算方法は、「相続開始時の預貯金債権の額(口座基準)」×「20%」×「当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分」=「単独で払戻しのできる額」となります。

多くのマスコミは、納税者のへのインパクトから「配偶者居住権」をクローズアップすることが多いですが、現実的には「仮払い」の方が役に立つことが多いのではないかと思われます。「親の死後に銀行を凍結されて葬儀費用の捻出には頭を抱えた」との声は少なくありません。また、生存中に親の銀行口座を管理するのは、あまりしたくないという人も多く、今回の仮払い制度は非常に助かる制度だと思われます。

 

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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