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 今の相続は、結婚をしなかった女性、子のいない女性の相続が珍しくありません。そのような人たちが死亡した場合は、相続財産法人として資産を換価し、債務を整理し、その残りは国庫に帰属することになります。相続されずに国庫に入った相続財産は、平成29年は520億円と5年前に比べて4割増しとなっています。

 相続人がいない高齢な女性が亡くなり、その方の預金通帳に仮に8千万円の残高があったとします。皆さんは、そのようなお話を聞くともっと贅沢な生活をすればよかったのにと思われる方が出てきそうですが、本人の立場になったら、天涯孤独の立場で年齢を重ねていくとしたらいくらぐらいの預金が手元にあれば安心できるのか考えてみてください。2千万円では全くの不足で、4千万円でも不安で、8千万円でも心配。それが本人の思いだと思います。

 さて、その資金が国庫に帰属してしまうことを本人は納得できるのでしょうか?

 民法は、第1順位の相続人を子とその代襲相続人、第2順位の相続人を両親と祖父母、第3順位の相続人を兄弟姉妹と甥姪と規定しています。つまり、子がない高齢者の遺産は兄弟姉妹と甥姪に相続されるのですが、これに納得できる人たちがどれだけいるのでしょうか。そもそも、なぜ、兄弟姉妹や甥姪に相続権があるのでしょうか? 

 兄弟姉妹の相続権は家督相続の名残です。父親が死亡した場合には、その財産は長男が相続し、その次には長男の子が相続します。しかし、子がないまま長男が死亡した場合には、家督相続はやり直しになり、長男から先代に戻り、それを次男が相続するといった具合です。これは皇室典範の定めでもあります。先祖代々から承継されている財産ならばそれも納得できるでしょう。

 夫婦で稼いだ財産をなぜ兄弟姉妹に相続させる必要があるのでしょうか。夫が死亡した第一次相続では、夫婦で稼いだ財産を、それとは全く関係のない夫の兄弟と分け合わなければなりません。ましてやその後の妻の第2次相続においても自分の兄弟姉妹に相続されるという不合理。それならば、それらの相続財産をもっと有効に活用される方法はないものでしょうか。

 例えば、宗教施設が立派な建物を建て替える資金はどこから確保されるか考えてみてください。おそらく遺言ビジネスなのでしょう。多額の資産を持つ高齢者はその処分に苦労していると思われます。

 仮に一人残され、居宅に居住し、数千万円を持つ高齢な女性がいたとします。その方たちに奨学金を作ってもらうのも一つの考えです。おばあちゃんが卒業した小学校の子供たちで給食費が払えない子たちがいます。その子供たちに自分の名前のついた奨学金を毎月3万円支払うとしたなら、小さな子供たちが自分の名前を覚えてくれるのなら、嬉しいと思うし、自分が必要としなくなった財産で、彼ら、彼女らの将来が良い方向に向かうのならその財産の価値が高まります。

 従前の公益法人は民法を基礎としてきましたが、設立には許認可が必要で、法人を設立するには財政的な基盤が要求されました。

 しかし、いまでは、一般社団法人であれば手元の現金2千万円でも奨学金社団が設立できます。寄付金である受贈益に課税されない一般社団法人を設立すれば、その遺産は無税で一般社団法人に移動することができるのです。

 

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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