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 相続財産には現預金から株、不動産、家財や乗り物まで様々なものがありますが、それらはすべて国税庁が定める「財産評価基本通達」のルールに従い財産の価額を見定めています。相続財産の評価の他、同族会社のグループ内での株式移動や再編の際の評価にも利用されます。

 原則として財産評価は時価で行われますが、遺産の中には時価を算定しづらいものもあり、通達はそれらを種類ごとに細かく分けて、評価のルールを定めています。評価の対象となる財産は、土地では宅地や商業地の他、鉱泉、山林、池や沼などあらゆる種類に分かれています。また建物だけでなく樹木の評価ルールも存在します。

 例えば果物の樹木では、幼齢樹なら植樹からの苗木代、肥料代、薬剤費代などの合計額の7割、成熟樹なら合計額から償却費を控除した7割と決まっています。

 動産だとさらに細かく、商品、家畜、書画骨董品、乗り物といった現物が存在するものから、特許権、著作権、信託受益権といった各種の権利、また株式や社債まで、あらゆる財産が個別に評価ルールを定めています。

 この通達は、税法上で定められた「法律」ではなく、また法律の細則に位置付けられる「政令」や「施行令」でもありません。あくまでも国税庁長官が国税職員や税務署員の現場での取り扱いを助けるための指針として定めたものです。ですが実際には、通達は法律と同様の拘束力を持ち、裁判でも同様に扱われることが多くみられます。

 去年4月に下された最高裁判決では、通達に沿って行われた評価額の正しさを認める一方、「通達が国民に対し直接の法的効力を有するべきというべき根拠はない」と判示しています。

 だが実際にはあらゆる納税者や税理士が通達の評価に縛られているわけで、こうした司法の言葉が中身のないレトリックにすぎないと感じてしまうのも致し方ない気がします。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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