1a264e8d5032bff20d29af8615602000_s

 例えば1500㎡の土地に賃貸アパートを建てていたとします。敷地内には16台分の駐車場(500㎡)が建物に隣接して設置されているのですが、若者の車離れによるものかアパートの住民だけでは満車にならないことから、オーナーは空き駐車場をもてあましていました。

 すると近隣の会社から営業車を停めたいとの申し出があったため、本来はアパートの住民用でしたが賃料を稼ぐのにオーナーはこの会社に5台分を貸すことにしました。空きスペースの有効活用として、郊外で賃貸住宅を経営する地主には当たり前の話です。

 ただし、ここで相続が起きると問題が生じます。所有者の死亡により、この敷地の路線価評価はどうなるのでしょうか。一般の感覚であれば、建物の土地と駐車場部分は一体の資産として考えるのが普通でしょう。

 ところが国税庁の財産評価基本通達では、なんと一部でもアパートの住民以外に貸している駐車場の土地は「雑種地」の扱いになり、駐車場は本体のアパートの敷地には含まないことになるのです。つまり駐車場部分の500㎡は貸家建付地とは認められず、借地権割合の評価減が不適用となります。加えて地積規模の大きな宅地の評価減も1500㎡を一体地としては認められず、駐車場の500㎡と建物敷地分の1000㎡とに分けられてしまいます。

 こうした通達があることから、多くの税理士は「通達上有利にするためには空きスペースは他人に貸さないでそのままにしておきましょう」とアドバイスしています。しかしこのアドバイスは、的外れであることは少し考えればわかるはずです。オーナーにとって収益物件は賃料こそが命のはずです。空いたスペースを放置することなど論外でしょう。そもそも駐車場部分をアパートの住人に貸そうが他の第三者に貸そうが土地全体の評価に何ら影響を与えないはずです。駐車場は本体の建物と一体になっているから価値があります。他人に貸しているとの理由で土地の評価を分離するのはあきらかに間違いであると言わざるを得ません。

 駐車場の容積率はアパートの容積率で既に消化されてしまっています。つまりこの土地に建築はできないのです。それを更地扱いとするなんて世間の常識からはズレまくっています。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

「所長の独り言」一覧はこちら

 

免責
本記事の内容は投稿時点での税法、会計基準、会社法その他の法令に基づき記載しています。また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上実行してください。当事務所との協議により実施した場合を除き、本情報の利用により損害が発生することがあっても、当事務所は一切責任を負いかねます。また、本記事を参考にして訴訟等行為に及んでも当事務所は一切関係がありませんので当事務所の名前等使用なさらぬようお願い申し上げます。