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 会社法上の「合同会社」を設立する人が増えています。2021年には前年比1割増の約3万7千社が設立され、全国で設立された法人の内、4社に1社を占めています。

 合同会社は2006年の会社法施行で導入され、設立の手続きが簡単で意思決定が迅速に行えるなどのメリットがあることから、不動産管理会社などに活用されることが多い法人形態です。株式会社の設立には公証役場での定款認証が必要で手数料だけで5万円かかりますが、一方の合同会社は定款認証が不要で、法人登記の際の登録免許税も株式会社は15万円であるのに対して合同会社は6万円と、設立時の負担が少なくなります。

 また株式会社の役員は10年経つごとに改選して登記しなければならず手間とコストが掛かりますが、合同会社は不要で、株式会社に求められる株主総会や決算公告も必要なく、法人としての意思決定を迅速に行えることが合同会社の強みです。

 不動産管理を個人ではなく合同会社で行うと、経費と認められる範囲が広がるメリットもあります。親族を役員にして報酬を支払えば、結果として将来の相続財産が減るため相続対策にもなるし、不動産で得た収益にかかる税金も、所得税は高所得であるほど負担が重くなるのに対して法人であれば比較的低い税率の法人税で納めることができます。

 この合同会社は、株式会社のような「議決権」がなく、社員(出資者)全員が役員として業務執行や企業の意思決定に関わる仕組みです。基本的に全員の同意がないと経営判断できませんが、家族だけで経営する会社などであれば、当面は問題にはならないかもしれません。

 しかし将来的にずっと家族が円満である保証はどこにもありませんので、仮に家族全員が合同会社の出資者で、子供たちの間で財産争いなどが起きてしまえば、大きな弱点になる特徴となります。会社運営が立ち行かなくなれば、たとえ株式会社より身軽であろうと、財産保全自体がままならなくなってしまうリスクがあることは認識しておくべきでしょう。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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