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 今月末で期限を迎えるはずだった適格請求発行事業者の登録申請期限が、9月末まで延長されています。このインボイス制度については、一般への認知度は低水準であり、多くの事業者はインボイス制度の内容や問題点をあまり認識していないように思われます。

 インボイス制度は経理実務の負担を増大させ、事務コストを大きく増加させるだけではなく、取引先から取引を見直されるという経営上の問題も生じさせるほど大きな影響を及ぼします。

 事務コストの増加という点からすれば、金額の多寡を問わずこまめに請求書を発行したり保存したりするだけではなく、例えば「立替金精算書」の作成が大きな手間になると考えられます。新設法人や社長一人の会社などに多いのですが、携帯電話の名義などを社長個人の名義のまま変えず、社長個人の名義の請求書で法人の経費とすることが良く見受けられます。しかし、名義が個人の請求書を法人のインボイスとすることはできませんので、このような場合には社長個人名義の請求書に加え、会社の経費とするために社長に立替金精算書を書いてもらう必要があります。

 同様に、例えば数十人で飲みに行き、代金を幹事が集金して店に支払った場合を考えてみましょう。一人ひとりが店から割り勘の領収書をもらわない場合、現行では払った金額を帳簿に書いておけば原則問題はありません。しかし、インボイスでは各人ごとの領収書が必要になりますので、仮に店に領収書を作ってもらわなければ、実際に代金を支払い、一括して領収書をもらった幹事は各人別に立替金精算書を作り、原則として一括で店に支払った領収書のコピーを各人に配る必要があります。

 その他、業種によってはインボイス制度を機に取引の見直しなども増えると懸念されます。典型が、今はやりのサブスクリプションのサービスを対事業者向けに提供している業種です。サブスクのサービスは毎月継続課金され、口座振替などで自動的にお金を払うことになるため、中途解約できるのに顧客があまりそのコストを意識しないまま惰性で継続するというケースが多々見られます。このためインボイスがスタートしますと、金額に関係なく請求書等の交付が必要になりますので、否応なくお客様はそのコストを意識することになるでしょう。そうなると、より優れたサービスを提供し続けなければ、即解約につながるわけで、これらの事業者に与える影響は大きいものと考えられます。 

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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