第1102話 使途不明金と使途秘匿金

法人は、事業の経営状況について広く公に対して報告(決算公告)する義務を負っています。そのため本来なら支出の内容が不明確なものはあってはなりませんが、実際には叩けばホコリの一つや二つは出てくるもの。もし内容を明らかにしたくない支出がある場合、税法上は「使途不明金」や「使途秘匿金」として処理します。
使途不明金は、領収書などで金額や支払先は分かっているものの、その目的が明らかでない支出です。本当に会社のための支出かどうかもわからず、支出の目的、効用、用途について確認が取れない領収書に但し書きのない支出や、領収書がもらえない謝礼、リベートなどが該当します。帳簿上では交際費や寄付金などの適当な勘定科目で処理することが一般的ですが、これは税法上経費とは認められませんので損金不算入となります。
これに対して使途秘匿金は、使い道どころか支払先の相手先すらも不明なものを言います。取引先役員などへの裏リベート、総会屋対策費、談合のための費用、政治家への裏献金、地元対策費、賄賂など、いずれも表沙汰にはしたくない費用です。もちろんこれらも使途不明金同様、全額損金不算入ですが、使途不明金がおおむね4割程度の上乗せ課税であるのに対して、こちらの使途秘匿金はほぼ倍額がペナルティとして税額に乗ります。
企業にとっては重い負担ですが、毎年一定数は秘匿金処理が存在するということは、追徴課税を払ってでも、企業を守るために表に出せない支出があるということでしょう。使途を秘匿すること自体は法人税法上違法というわけではなく、その支出も刑事罰の対象とはされていません。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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