第1128話 お墓と税金

去年の12月に父の13回忌法要をして墓参りを済ませ、今年は幾分すっきりした気持ちで新年を迎えることができました。このお墓について今回は考えてみましょう。
お墓を入手することを「お墓を買う」とか「お墓を建てる」とかいいます。墓石そのものは基本的に一品生産で発注しますので、「購入」で間違いありませんが、墓地については「使用する権利を買う」ものなので、あくまでも使用権を取得することを意味します。つまり、墓地については、運営者から所有権は移動しません。この使用権は、建前上、半永久的に子孫に引き継がれるものとされているので、一般的に「永代使用料」と呼ばれています。
この永代使用料について、運営側は「永代供養費」などと表現して顧客にアピールしています。しかし実際には「永代使用権さえ購入すれば、その後は何もしなくても僧侶や施設管理者が永久に手厚く弔い続けてくれる」というものではありません。
お墓を新規に購入するにあたっては、墓石の代金のほかに、「永代使用料」と「管理料」が必要となります。また霊園ではなく寺院の場合には、檀家になるための「入檀料」が請求されます。消費税では、永代使用料と入檀料は非課税ですが、墓石費用と管理費については課税対象となります。
このうち管理料ですが、たとえ契約上の名目が、永代供養費となっていても、管理費の継続的な支払いが一定期間以上途絶えれば、墓地の使用権は消滅する仕組みになっています。古寺などを訪れると、裏手に無造作に積み上げられた墓石を見かけることがありますが、これらが管理費の切れた「永代供養」の末路です。
少子化や核家族化の進展により、いわゆる〝無縁墓〟が増加傾向にあります。そのため最近では「期限付きの永代供養」というサービスを提供する寺院や霊園も増えてきました。このサービスでは、一定期間が経つと遺骨を共同墓地に合祀するというもので、『子や孫にお墓を託すことになる祖父母・父母の世代』と『お墓を守っていかなくてはならない子や孫の世代』の双方にとって、合理的な仕組みになっています。
相続時には、お墓も財産の一つとして誰かが受け継ぐことになります。お墓は民法上「祭祀財産」と呼ばれ、相続税の課税対象外です。基本的には分割することができず、相続人の一人だけが承継します。そして墓地は使用権の譲渡や転売が認められていないことから、墓そのものについても寺院や霊園が、トラブル防止の観点から生前贈与を認めなくなっています。もちろん、家族のうちの「墓の管理者」が病気などで管理者としての責任を果たせないうえ、生前承継の必要性があると判断された場合には、条件付きで認められることもあります。
なお、相続でお墓を承継すると「墓を守る」という責任が生じることから、相続人には供養のための費用のほか、毎年の管理費の支払いなど、多くの義務と責務が生じます。また相続に際して、分骨や改葬などの申し出があった場合には、祭祀主宰者として決定する権利と義務を負います。そのため現実には「墓守のなり手がいない」というケースも少なくありません。そうした際には、遺言があればそれに従い、それでもまとまらなければ、通常の財産と同じように家庭裁判所が決定することになります。
墓地の永代使用権契約の承継は名義変更だけで済みますが、多くの場合、名義変更手数料が別途必要になります。寺院では宗教的費用として「寄附金」扱いにしていることも多いです。
お墓の生前贈与は基本的にできませんが、相続税対策として生前にお墓や仏具を購入することはできます。お墓や仏具は相続財産にならないので、生前に購入しておけば多少なりとも財産を減らせます。さらに土地については、「使用権」ですので、不動産取得税も固定資産税もかかりません。
葬儀からお墓の購入、そして維持管理に関する手続きは、もはやブラックボックス化しています。家族が集まる際には、相続についての会話をもっとオープンにすべきです。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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