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 近年の個人事業主の税務調査における最大の論点の一つは、自己の商売が税務上の事業所得に当たるか雑所得にあたるかの判断です。事業所得は赤字を他の所得と通算できますが、雑所得はそれができず、税負担に大きな影響が生じることから、これらの所得区分は非常に重要です。一般的には、雑所得は副業的な規模で、事業所得はそれだけで生活できる規模感があるものなどと言われていますが、ケースバイケースの判断となります。このような非常にグレーな論点で課税しようとすると、納税者は当然反発しますので、修正申告を取りにくいことから、一昔前はそこまで税務当局は厳しくありませんでした。しかし近年は更正処分も辞さずの構えで、厳しい対応が増えています。
 とりわけ、士業に対してもこの判断が厳しくなっています。士業は登録するだけでもかなりのお金がかかりますし、社会的信頼が大きいことから、原則として事業所得と判断されます。しかし実態として副業で士業を行い、本業は給与所得者という方もいます。このような方の士業の収入は、副業であるので当然雑所得とされます。
 実際、副業で社会保険労務士業務を行っていた納税者について、その業務が事業所得ではなく雑所得とされた高裁判例があります。裁判所は、給与の大半を費やして補填しなければ事業を継続できないほどの赤字が5年連続で計上されているという点に着目し、このような巨額な赤字体質の社労士業務は雑所得と判断しています。
 この「巨額の赤字が5年連続」といった判断で雑所得になり得るということは、税務当局としては現状、非常に課税しやすい状況になったということも意味します。各年の申告書を税務当局のシステムに入力さえすれば、このような納税者は自動的に抽出できるからです。結果として、巨額の赤字が毎年続く事業所得の申告をしている場合には、税務調査リスクが高いことを自覚し、赤字を解消する合理的な利益計画なども説明できるようにしておく必要性があるということです。
 一方で「巨額の赤字が連年続くと事業所得にならない」という理屈を前提とすれば、前年が事業所得だからといって、同じ事業内容でも今年が事業所得になるとは限らないことも意味します。しかし、このリスクを踏まえて今年から雑所得に変更したとしても、また別の問題が生じます。今年の申告が雑所得であることを調査官が利用して、「過去と実態は大きく変わっていないはずなので、過去の年分も事業所得ではなく雑所得に該当する」と指摘する可能性が極めて高いからです。結果として税務調査のリスクヘッジとして事業所得から雑所得に変更することについても、赤字が続いていること以外の理由付けが必要になります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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