第1236話 一物二価の課税
税法上、取引は時価で行うこととされています。しかし実務上、非上場株式を譲渡する場合には、様々な問題が生じてしまいます。
非上場株式を株価評価するには、まず株主判定が問題となります。株主判定を譲渡前で行うか、それとも譲渡後で行うかという問題です。
非上場株式の評価額は、株主が支配株主に該当する場合には非常に高額な株価になってしまいますが、そうでない場合には非常に低額になる傾向があります。
この点については、見解の相違もありますが、原則として譲渡前で見るべきというのが多数説です。譲渡所得は株式を譲渡した株主について、その株主の値上がり益に課税するものだからです。実際、個人から法人への株の譲渡は譲渡前でやるべきと通達で明記されています。法人間の譲渡や法人から個人の譲渡でも、同様の解釈が妥当と考えられます。
しかし、問題はそれほど単純ではありません。というのも、所得税でも法人税でも、資産の受贈益に対して課税されるからです。資産を無償ないし低額で取得した場合の受贈益に課税される場合、理屈としてはその資産の取得者の属性が重要になるはずです。結果、非上場株式の受贈益が問題になる場合には、譲渡後で株主判定を行うべきです。
実務においても、譲渡前の判定だと支配株主にならない法人が、通達で認められた安い価格で譲渡した株式につき、譲渡前後を通じて支配株主となる買主である法人に対して、支配株主の評価額が時価であるとして多額の受贈益が課税された事例があります。裁判所でもこの課税を認めたのですが、これはつまりのところ譲渡する側は通達で認められた安い金額で譲渡できるのにかかわらず、購入する側は高い金額で取得しなければならないという矛盾した結果になってしまいます。
時価とは不特定多数で取引が成立する価格を意味するとされていますので、当然一つの価格になるはずです。このような売主と買主で異なる価格がそれぞれの時価になるといった状態はありえません。
ではなぜこのような問題が生じるのか。それは、時価を通達で決めているからです。通達は税務当局の指示文書で法律ではありませんから、他の規定と整合性を欠く通達もなかには見られます。このように通達は、納税者や裁判所を拘束しませんから、多少いい加減でも問題ないとも言えます。
しかし一番の問題は、法律でもない通達を法律と同様の基準として扱うことがある裁判所で、非上場株式の時価は通達に基づくことを前提とした判決をしている点で、一物二価でも問題なしといった何ら整合性のない結論が導かれていることです。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
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