被相続人の死亡に伴って、勤務先から支給される死亡退職金のうち、一定の要件を満たすものに対しては、相続財産とみなされて相続税が課税されることになっています。

 この死亡退職金に関連して、勤務先からもらう弔慰金も問題になります。死亡退職金と同様に死亡退職をきっかけに雇用主から支払われるものですが、弔慰金は故人である被相続人を弔うため、社会常識として遺族に支給されるもので、退職金のように勤務したことへの対価ではありません。このため、適正な金額の範囲内の弔慰金については、死亡退職金には当たらないとされています。

 問題になるのは適正な金額の範囲内がいくらかという点ですが、弔慰金は往々にして問題になる「経費になる役員退職金の適正額」の範囲の取り扱いなどとは異なり、その計算方法が決まっています。具体的には、業務上の死亡の場合には死亡時の給与の36ヵ月分、それ以外の死亡の場合はその6ヶ月分が適正額とされています。

 このため、業務上の死亡かどうかの判断が問題になりますが、単に業務時間中に死亡した場合だけではなく、被相続人が行っていた業務が直接の原因となって、病気になって死亡した場合もこれに当たると説明されています。

 一方、一見すると業務中としか思えない通勤途中で災害にあって死亡したような場合については、業務上の死亡には当たらないとされています。

 両者の区分の基準ですが、死亡に伴う労災保険の給付対象になる業務災害の判断を前提としています。なお、原則、労災の対象とならない役員の弔慰金の判断も、この労災保険の判断を前提に行われます。

 労災保険の判断が前提になりますので、それが認められにくいといわれる自殺について、業務上の死亡にあたらないとされたものがあります。労災保険の判断として、労働者の業務遂行中に生じ、かつ死亡と業務の間に相当の因果関係があることが必要と判断されていますから、この点に照らして判断されます。

 一例として、過去の裁決事例では、業界団体の会議に出席した役員が、会議中に死亡したことについて業務中の死亡と認めなかったものがあります。会議そのものが死亡に至るような特別なプレッシャーを与えるものではなく、業務起因性がないとされたのです。

 このような理屈で業務上の死亡か否かを判断しますので、実際の判断にあたっては、労働法の専門家や医師の判断なども踏まえる必要があります。加えて業務起因性の有無の判断で税務当局ともめることが多いですから、医師の診断書など、それを証明できる資料の保存にも注意が必要です。業務上の死亡か否かで、無税で遺族に渡せる弔慰金の金額が6倍も異なりますので、業務上の死亡を主張する際は慎重に判断する必要があります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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