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 都心の高級住宅地の路線価は、今は取引価額の半額です。つまり、路線価で50%減になり、貸家建付地で21%減になり、貸付事業用宅地の評価で50%減になります。つまり1億円の土地が2千万円の評価になるということです。

 「相続財産のうち一部の不動産については、財産評価基本通達によらないことが相当と認められる特別の事情があると認められることから、ほかの合理的な時価の評価方法である不動産鑑定評価に基づいて評価することが相当である(平成29年5月23日採決)」とした裁決があります。

 非情におかしな裁決です。法に従った評価が否認されるなどあってはならないと個人的には思うのですが…。

 この事案は、土地建物を取得し、その3年後に相続が開始し、相続から9か月後に売却したというものです。つまり、平成21年12月に銀行から借入をして土地建物を取得し、平成24年6月に相続が開始し、平成25年3月に土地建物を売却しました。この事案について相続税財産基本通達による評価額が否認され、不動産鑑定価額が採用されてしまったことになります。相続直前の駆け込み取得についての否認ならまだしも、相続の3年前に取得した土地建物にまで否認の範囲が広がるとは恐ろしいことです。 

 昭和の時代は、土地の値上がりと家賃の値上がりのダブルインカムで、減価償却は定率法で節税効果があり、100の賃料で120の返済が可能でした。

 しかし、今現在は、土地は値下がりする資産で、家賃の値下がりと空き家の増加という3重苦の状態です。建物の減価償却は耐用年数47年の定額法で、建物付属設備も定額法が強制されることになりました。100の賃料では80の返済しかできず、今ではキャッシュフローがマイナスになってしまいます。

 今、世の中には3種類の人間がいます。①昭和の時代を知り、平成の時代を知っている人たちと②昭和の時代に留まる人たち、そして③平成の時代しか知らない人たちです。

 ①の人たちは、昭和に不動産投資が成功した理由を知っています。そして、いま、それが成り立たないことも知っています。しかし、②の人たちは、不動産賃貸業が儲かる時代の発想を引きずって旧来型の不動産投資を実行します。そして③の人たちは借入金利1%で、賃料利回り8%というエクセル型の発想で、採算に乗ると判断します。

 RC(鉄筋コンクリート造)の物件は、10年で20歳の歳を取ります。仮に建築後10年のマンションは、人間に例えれば20歳です。売ろうと思えば、ご縁はいくらでもあるでしょう。しかし20年を経過したマンションは、40歳。30年を経過したマンションは60歳で、40年を経過すれば80歳の高齢者になります。

 このように考えると、RCの建物を建築したら永遠という投資計画は成り立ちません。

 資産家が相続税の節税のために賃貸業投資をする場合、金もうけをするために賃貸業投資をする場合、老後に備えて賃貸物件を購入する場合、それぞれに区分して考えなければ賃貸業投資の採算は判断できないといえそうです。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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