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 相続税法には、相続財産の中で事業や居住のために使われていた宅地について、一定の要件を満たせば、その宅地に課税される相続税を減額する「小規模宅地等の特例」という制度があります。宅地の利用状況によって最大税金が8割も減額される非常に節税効果が高い制度ですが、摘要要件が複雑なため、専門家でも適用の可否について判断に迷うことがしばしばあります。

 特例の適用対象となるのは、「事業に使っている宅地」と「住んでいる宅地」に分けられ、さらに事業用宅地は「特定事業用宅地等」「特定同族会社事業用宅地等」「貸付事業用宅地等」と細かく3つに種類がわかれます。特例の適用に当たってはそれぞれ要件が異なり、その中でも特に判断が難しいのが事業用宅地です。

 被相続人が営んでいた酒屋を取り壊し、相続税の申告期限までに賃貸アパートに建て替えた時など、全く異なる事業に転業した時は、特定事業用宅地等としては認められませんが、これが酒屋をコンビニに変えたのであれば、被相続人の事業の一部を他の事業に転業したのに過ぎないので、特例事業用宅地等として認められます。

 また区分所有登記がされている完全分離型2世帯住宅では、分離マンションと同じ取り扱いとなり、特定居住用宅地等と認められません。解消方法としては、以下の2通りが考えられます。

【方法1】

1)子名義部分を親名義に変更(売買、もしくは贈与)
2)2つの区分建物を、区分合併登記する

【方法2】

1)各区分建物部分の持ち分をそれぞれ交換する(交換の特例)
2)2つの区分建物を、区分合併登記する

 所得税や贈与税、手続き費用を考慮した場合、相続税より高くついてしまう可能性もありますので、対策する場合は専門家に相談することが望ましいでしょう。

 また被居住者が老人ホームに入居して、居住していた自宅が空き家になったとしても、そこでの居住は継続しているものとして、特定居住用宅地等として認められます。ただし、空き家となった自宅とは別に住んでいた親族が住み始めたり、他人に賃貸したりした時には、居住が継続しているとはならないので、特定居住用宅地等とは認められなくなります。被相続人が居住していた宅地が海外に所在していた場合であっても、特例の適用要件には所在についての制限がないため適用は可能となります。

 特例の適用に当たっては国税庁のホームページなども参考にして慎重に判断してください。

 

 私の事務所は、明日から正月休みに入ります。皆さん、よいお年をお迎えください。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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